・・・ オン、ア、ラ、ハ、シャ、ナウ 高い窓から入ってくる日脚の落ち場所が、見ていると順々に変って行って――秋がやってきた。運動から帰ってきて、扉の金具にさわってみると、鉄の冷たさがヒンヤリと指先きにくるようになった。・・・ 小林多喜二 「独房」
・・・生れた場所は南ドイツでドナウの流れに沿うた小都市ウルムである。今のドイツで一番高いゴチックの寺塔のあるという外には格別世界に誇るべき何物をも有たないらしいこの市名は偶然にこの科学者の出現と結び付けられる事になった。この土地における彼の幼年時・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ ドイツの町を歩いていたとき、空洞煉瓦一枚張りの壁で囲まれた大きな家が建てられているのを見て、こんな家が日本にあったらどうだろうと云って友人等と話したことがあった。ナウエンの無線電信塔の鉄骨構造の下端がガラスのボール・ソケット・ジョイン・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・n structures were rebuilt into massive reinforced concrete buildings, so that they could stand from now on as undaunted ・・・ 寺田寅彦 「PROFESSOR TAKEMATU OKADA」
・・・当時は世界第一であったナウエンの無線電信発信所を見物したのもこの見学団の一員としてであった。テレフンケン・システムの大きな蛇のようなスパークがキュンキュンと音を立ててひらめいては消えるのを見た。同じ団体にはいってヘッベルの劇場の楽屋見学をし・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・赤い砂岩の小さな墓標には "For now we see in a glass darkly, but then face to face." と刻してある。その後ウェストミンスター・アベーに記念の標石を納めようという提議が大学総長や王立協・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
出典:青空文庫