・・・麦笛を吹くような声でピーピーと鳴き立ててはベランダの前へ寄って来て、飯の余りやせんべいの欠けらをねだるのである。それからまた池にはいったと思うとせわしなく水中にもぐり込んでは底の泥をくちばしでせせり歩く。その水中を泳ぐ格好がなかなか滑稽で愛・・・ 寺田寅彦 「あひると猿」
・・・もう一つの漫画の長所は、音楽との対位法的モンタージュを行なう場合における視像のエキスプレッションが自由自在であって、画像の運動は pp まで任意に大なる変化をすることができ、クレッセンドー、ディミニゥエンドー勝手次第なことである。顔じゅうい・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・その頃の羅宇屋は今のようにピーピー汽笛を鳴らして引いて来るのではなくて、天秤棒で振り分けに商売道具をかついで来るのであったが、どんな道具があったかはっきりした記憶がない。しかしいずれも先祖代々百年も使い馴らしたようなものばかりであった。道具・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・時々小鳥のようなピーピーという泣き声を出しながらも負けずにかみつき引っかくのである。三毛が放すと同時に向き直ってすわったまま短いしっぽの先で空中に∞の字をかきながら三毛のかかって来るのを待ち受けていた。どうかするとちびは箪笥と襖の間にはいっ・・・ 寺田寅彦 「ねずみと猫」
・・・ Newton, Opticks, pp. 375, 376, Second edition, 1718. L'Illustration, 7 Juillet, 1928. Daly, Igneous Rocks and the・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・ ――お前みたいなピーピー銀行員なんか勿論そうだよ。 ――ふーむ。…… ――ひどく、うなるじゃないか。この例一つで、おれが社会主義の宣伝をしているんでないってことは、はっきりしたさ。社会主義の現実がみんなにおしえるんだ。資本主義・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
出典:青空文庫