・・・後年私は、新聞紙上で、軍人や官吏が栄転するたびに、大正何年組または昭和何年組の秀才で、その組のトップを切って栄進したという紹介記事を読んで、かつての同級生の愚鈍な顔を思い出さぬ例しは一度もないくらいである。彼等が今日本の政治の末端に与ってい・・・ 織田作之助 「髪」
・・・あなたは、これまで、若いジェネレエションのトップを切っていたのでしょう?」「冗談じゃない。このごろは、まるで、ファウストですよ。あの老博士の書斎での呟きが、よくわかるようになりました。ひどく、ふけちゃったんですね。ナポレオンが三十すぎた・・・ 太宰治 「鴎」
・・・当時ベルリンではこれを俗にキーントップと言っていた。常設館はいくつもあったがみんな小さなものでわずかの観客しか容れなかったように覚えている。邦楽座や武蔵野館のようなものはどこにもなかったようである。各地に旅行中の夜のわびしさをまぎらせるには・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・は top に通じる。 敵の首級を獲ることを「しるしをあげる」と言う。「しるし」が頭のことだとすると、これは梵語の siras、sirshamに似ている。 八頭の大蛇を「ヤマタノオロチ」という。この「マタ」が頭を意味するとすると、こ・・・ 寺田寅彦 「言葉の不思議」
・・・こんどは上へ上がろうと云うから階子を登ってトップへ乗った。「この左りにあるのが有名な孤児院でスパージョンの紀念のために作ったのです。「スパージョン」て云うのは有名な説教家ですよ」「スパージョン」ぐらい講釈しないだって知っていら、腹が立ったか・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
・・・すべての主婦、学生のために勤労婦人こそトップに立ってそれを求めている。女らしさのゆえにこそ、婦人たる性を愛し尊ぶからこそ、今日婦人は立っている。そのことを、ひとも我も、しんから自覚し、たたかいにおいてさえも婦人の天真な美しさとつよさとを発揮・・・ 宮本百合子 「「女らしさ」とは」
・・・ 第七工場 直流、交流発電キ 電キ機関車 五〇〇 第五工場 小型モーター セン風機 家庭器具 四五〇 第十一工場 製図、営繕十二工場が最も戦闘的であって、ストのトップを切る。田清、時代、そしきがここに・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
・・・十九日の日本プロレタリア文化連盟拡大中央協議会は、開会、即時解散をくったが、文化団体として前例のない勇敢なデモが敢行され、新聞はトップ四段抜きでその報道をのせ、築地小劇場の会場が混乱に陥った瞬間の写真が掲載されている。警視庁特高係山口、明大・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・政治と文化とを一貫して、世相を押しきったこのような潮流は、一九四九年度の毎日文化賞の準備調査、読売新聞社の良書ベスト・テンの調査などで、諸々批判のおこっている永井ものがトップをしめ、「宮本武蔵」や「親鸞」「風とともに去りぬ」「細雪」「流れる・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
はなしはちょっとさかのぼるが、一月六日アカハタ「火ばな」に「宮本さんの話」という投書があった。一月も六日といえば、選挙闘争に本腰がはいって、その日の紙面もトップに田中候補が信州上田で藤村の「破戒に学ぼう」と闘っているニュー・・・ 宮本百合子 「事実にたって」
出典:青空文庫