出典:青空文庫
・・・――そう云う今日、この大都会の一隅でポオやホフマンの小説にでもありそうな、気味の悪い事件が起ったと云う事は、いくら私が事実だと申した所で、御信じになれないのは御尤もです。が、その東京の町々の燈火が、幾百万あるにしても、日没と共に蔽いかかる夜・・・ 芥川竜之介 「妖婆」
・・・先生はポーもホフマンも好きなのだと云う。この夕その烏の事を思い出して、あの烏はどうなりましたと聞いたら、あれは死にました、凍えて死にました。寒い晩に庭の木の枝に留ったまんま、翌日になると死んでいましたと答えられた。 烏のついでに蝙蝠の話・・・ 夏目漱石 「ケーベル先生」
・・・ これらの人々は、ゲェテ、ホフマン、バイロンやスコット等の作品からも強く影響され、当時の社会の現実生活ではブルジョア共によって軽蔑され、価値を認められない存在であった未開人、民衆、子供や女や詩人というものの美と善とをも、「ありのままの自・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・作品の構成がもっと立体的であって、いくつかの重大な出来事――アプトンの死。ホフマンの死。萬縣での流血の闘争など、もっと色彩づよく描写され、同時に揚子江の壮大な自然や白人の日常生活の姿などが遠近をもって描き出されたら、この作品は一層面白く、芸・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」