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・・・(いい加減に常盤御前とこうです。どの道そんな蕎麦だから、伸び過ぎていて、ひどく中毒って、松住町辺をうなりながら歩くうちに、どこかへ落してしまいましたが。 ――今度は、どこで倒れるだろう。さあ使いに行く。着るものは―― 私の田舎の叔母・・・
泉鏡花
「木の子説法」
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・・・ 戦争ものでない菊人形と云えば、あのどっさりの菊人形の見世ものの中で何があったろう。常盤御前があった。小督があった。袈裟御前もあった。一九〇五年に、団子坂の菊人形はそういうものばかりを見せていた。小さい女の子は気味わるそうに、舞台からす・・・
宮本百合子
「菊人形」