ばく‐だい【×莫大】例文一覧 30件

  1. ・・・「君は何しろ月給のほかに原稿料もはいるんだから、莫大の収入を占めているんでしょう。」「常談でしょう」と言ったのは今度は相手の保吉である。それも粟野さんの言葉よりは遥かに真剣に言ったつもりだった。「月給は御承知の通り六十円ですが、・・・<芥川竜之介「十円札」青空文庫>
  2. ・・・ 私の父は酒毒で死んだ。 彼は死ぬ一週間前まで、毎日一升の酒を飲んだ。「おれの身の中には、何万円という酒がはいっている」 莫大な借金を残して死ぬいいわけに、彼はそう言っていた。 しかし、彼が借金を残したのは、酒を買う金の・・・<織田作之助「中毒」青空文庫>
  3. ・・・ それは、一少女の演奏料としては、相手を呆れさせる、というより、むしろ怒らせるに足る程の莫大な金額であった。 しかし、その金額や、その一歩も譲らない態度は、庄之助自身を不遇な音楽的境遇に陥れた楽壇への復讐であった。 そしてまた、・・・<織田作之助「道なき道」青空文庫>
  4. ・・・ 資本家は、国内の労働者から搾取した利潤以外に、こうして、植民地から莫大な利潤をかき集めてくる。この有りあまって、だぶついている金で彼等は、労働貴族や、労働者の指導者を買収しようとする。これは実際存在することであり、資本家は、それらの裏・・・<黒島伝治「反戦文学論」青空文庫>
  5. ・・・それだのに体量だけはわずかの間に莫大な増加を見せて、今では白の母鳥のほうがかえってひなの中の大柄なのよりはずっと小さく見えるくらいであった。一方で例のドンファンの雄鳥はと見るとなんとなく羽色がやつれたようで、首のまわりのあの美しい黒い輪も所・・・<寺田寅彦「あひると猿」青空文庫>
  6. ・・・チャップリンのごとき天才は大衆を引きつけ教育し訓練しながら、笑わせたり泣かせたりしてそうして莫大な金をもうけているのである。 和歌俳諧浮世絵を生んだ日本に「日本的なる世界的映画」を創造するという大きな仕事が次の時代の日本人に残されている・・・<寺田寅彦「映画芸術」青空文庫>
  7. ・・・しかしこういう流動に、さらに貨物車の影がレールの上を走るところなどを重出して、結局何かしら莫大な運動量を持ったある物が加速的にその運動量を増加しつつ、あの茫漠たるアジア大陸の荒野の上を次第に南に向かって進んでいるという感じがかなりまで強く打・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  8. ・・・の器械的当量が数量的に設定されるまで、それからまた同じように電気も、光熱の輻射も化合の熱も、電子や陽子やあらゆるものの勢力が同じ一つの単位で測られるようになるまでに行なわれて来た実験の種類と数とは実に莫大なものである。 人間の心の方則に・・・<寺田寅彦「科学と文学」青空文庫>
  9. ・・・何か空中へ莫大な蜘蛛の網のようなものを張ってこの蛾を食い止めるくふうは無いものかと考えてみる。あるいは花火のようなものに真綿の網のようなものを丸めて打ち上げ、それが空中でぱっとからすうりの花のように開いてふわりと敵機を包みながらプロペラにし・・・<寺田寅彦「からすうりの花と蛾」青空文庫>
  10. ・・・何か空中へ莫大な蜘蛛の網のようなものを張ってこの蛾を喰い止める工夫は無いものかと考えてみる。あるいは花火のようなものに真綿の網のようなものを丸めて打ち上げ、それが空中でぱっと烏瓜の花のように開いてふわりと敵機を包みながらプロペラにしっかりと・・・<寺田寅彦「烏瓜の花と蛾」青空文庫>
  11. ・・・ただ平時の不注意や不始末で莫大な金を煙にした上に沢山の犠牲者を出すようなことだけはしたくないものである。 これは余談であるが、一、二年前のある日の午後煙草を吹かしながら銀座を歩いていたら、無帽の着流し但し人品賤しからぬ五十恰好の男が向う・・・<寺田寅彦「喫煙四十年」青空文庫>
  12. ・・・山火事の場合は居合わす人数の少ないだけに、損害は大概莫大ではあるが、金だけですむ。 デパートアルプスの頂上から見おろした銀座界隅の光景は、飛行機から見たニューヨーク、マンハッタンへんのようにはなはだしい凹凸がある。ただ違うのはこっちのい・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  13. ・・・数からいえばおそらく莫大なものであろう。見ているうちに自分の目はだんだんにいろいろに変わって来た。そして芸術としての油絵というものに対する考えもいろいろにうつって行った。ただその間に不断にいだいていた希望はいつか一度は「自分のかいた絵」を見・・・<寺田寅彦「自画像」青空文庫>
  14. ・・・ある時颱風の話からそのエネルギーの莫大なこと、それをどうにかして人間に有益なように利用するようにしたいというようなことを話したら、大変にそれを面白がった。暴風の害を避けようというのでなくて積極的にそれを利用するというのは愉快だと云って喜んで・・・<寺田寅彦「子規の追憶」青空文庫>
  15. ・・・ 脳髄の中にある原子の数はたぶん十の二十何乗という莫大な数であろう。その中の二つ三つがどうにかなったとしてもたいした事はなさそうにも思われるが、しかしまた脳髄によって営まれていると考えられる精神現象の複雑さは想像のできないほど多様なもの・・・<寺田寅彦「蒸発皿」青空文庫>
  16. ・・・ 一秒時間に十八万六千マイルを走る光が一ヶ年かかって達する距離を単位にして測られるような莫大な距離をへだてて散布された天体の二つが偶然接近して新星の発現となる機会は、例えば釈迦の引いた譬喩の盲亀百年に一度大海から首を出して孔のあいた浮木・・・<寺田寅彦「小さな出来事」青空文庫>
  17. ・・・彼らは特殊の魔力を有し、所因の解らぬ莫大の財産を隠している。等々。 こうした話を聞かせた後で、人々はまた追加して言った。現にこの種の部落の一つは、つい最近まで、この温泉場の附近にあった。今ではさすがに解消して、住民は何所かへ散ってしまっ・・・<萩原朔太郎「猫町」青空文庫>
  18. ・・・この外国人は莫大なる月給を取りて何事をなすか。余輩、未だ英国に日本人の雇われて年に数千の給料を取る者あるを聞かず。而して独り我が日本国にて外人を雇うは何ぞや。他なし、内国にその人物なきがゆえなり。学者に乏しきがゆえなり。学者の頭数はあれども・・・<福沢諭吉「学者安心論」青空文庫>
  19. ・・・江戸趣味といわれる、着物や羽織の裏に莫大な金をかける粋ごのみ、一見木綿のようでひどく質のいい絹織である結城紬、こういうこのみは、政治上の身分制に属しながら、経済の実力では自分を主張した町人階級の反抗の形としてあらわれたのであった。 徳川・・・<宮本百合子「衣服と婦人の生活」青空文庫>
  20. ・・・この手紙の内容は、誰にでもすぐ考えられるとおり、キュリー夫妻が世間の人たちが誰でもやっているとおり自分の発見に特許をとって、ラジウム応用のあらゆる事業から莫大な富を独占するか、それとも、そんなことは一切せず、科学上の発見を人類の進歩のために・・・<宮本百合子「キュリー夫人の命の焔」青空文庫>
  21. ・・・ 世論調査には、莫大な費用がかかる。人手もいる。そのために、その費用の支出にたえ調査機関としての人手をもち、同時にその世論調査そのものがそれを行う経営にとってあるニュース・バリューをもって宣伝に役立つ場合、世論調査がとりあげられやすい。・・・<宮本百合子「現代史の蝶つがい」青空文庫>
  22. ・・・ジイドは、信じられぬ程の偏執で、その必要は、スターリンの犠牲であり、欺かれたもの達である労働者の上に死刑執行人と、搾取者とが君臨して「ロシアの労働者は幸福であると、フランスの労働者に信ぜしめる為の莫大な宣伝費をつか」うためであると云っている・・・<宮本百合子「こわれた鏡」青空文庫>
  23. ・・・軍部関係で闇に流れた莫大な紙があった。戦後、続出した新興出版事業者は、ほとんど例外なしに、この敗戦おきみやげたる紙の操作によって出発した。これらの事実については火野葦平のみならず、軍と「民間」との消息に通じた多くの人がもとより無智であろうは・・・<宮本百合子「しかし昔にはかえらない」青空文庫>
  24. ・・・した国外の人々は、間違えてふたをあけた壺からあばれ出した暴力を、民主的な理性と良心とによって粉砕するまでに、七年の歳月と、一五〇〇万人の軍人と、その幾層倍かにあたる一般市民の生命と天文学の数字のように莫大な費用を費さなければならなかった。・・・<宮本百合子「それらの国々でも」青空文庫>
  25. ・・・自分の分らない技術によって組立てられている世界、そしてその芸術は莫大な金銭によってあがなわれ、大家といわれているとき、文化感覚の中にある卑屈な事大主義が社会人として正直な、しかしそれは素人の批評である批評をひかえめにさせる。そのために大局か・・・<宮本百合子「ディフォーメイションへの疑問」青空文庫>
  26. ・・・所謂高貴な骨董趣味に溺れて莫大な蒐集をはじめたり、邸宅を構えようとしたり。総ては金のいることばかりである。 この期間は、今日になって眺めるとバルザックのさして永くない生涯にとって、最も急テムポに彼の政治上の王党派的傾向とカソリック精神と・・・<宮本百合子「バルザックに対する評価」青空文庫>
  27. ・・・健康な人間が健康な人間を殺戮するために科学の精髄をつくして研究している、その莫大なエネルギーと費用の幾分でもが、人類にとって不幸きわまりないこの病菌からの解放のためにふりむけられることこそ、ヒューマニティーの義務であると思わずにいられない。・・・<宮本百合子「病菌とたたかう人々」青空文庫>
  28. ・・・一九一六年にロシアの警保局が莫大な金をつかって『ロシアの意志』という、殆ど革命的な新聞を発刊し、アンドレーエフや、ブーニン、クープリン、ソログープなどを動員したことがあった。その時、極く少数の作家がそれへの参加を拒絶したのであったが、ゴーリ・・・<宮本百合子「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」青空文庫>
  29. ・・・アメリカの莫大なる天然資源、素晴らしい国内消費、不断に展開しつつある繁栄。これらもまた考慮に入れなければならない。西欧の資本家は利潤と返還資金を待望している。英国がこれらを供給しなければならぬ。 それ故労働組合運動は経済単位としての英国・・・<宮本百合子「ロンドン一九二九年」青空文庫>
  30. ・・・祖父の死後秋三の父は莫大な家産を蕩尽して出奔した。それに引き換え、勘次の父は村会を圧する程隆盛になって来た。そこで勘次の父は秋三の家が没落して他人手に渡ろうとした時、復讐と恩酬とを籠めたあらゆる意味において、「今だ!」と思った。そして、妻が・・・<横光利一「南北」青空文庫>