・・・かく東と南とは十二宮により西と北とは二十八宿に據れるに見ば、堯典の暦を作れるものは、十二宮及び二十八宿の智識を有せしものなるや明けし。然らば何故にそが十二宮なり二十八宿なりにて劃一せられずして、却て相混合せるものを擧げしか。これ陰陽思想によ・・・ 白鳥庫吉 「『尚書』の高等批評」
・・・ 王さまは仕方がないので、また、ウイリイをお呼びになって、「あの門と部屋々々の戸を開けてくれ。すぐに開けないとお前の命はないぞ。」とお言いになりました。 ウイリイは自分がちゃんとその鍵を持っているのですから、今度はちっとも困りま・・・ 鈴木三重吉 「黄金鳥」
・・・ 或る満月の晩おそく、彼女は静かに部屋の戸を開けて、こわごわ戸外を覗いて見ました。淋しいスバーと同じように、彼女自身満月の自然は、凝っと眠った地上を見下しています。スバーの若い健やかな生命は、胸の中で高鳴りました。歓びと悲しさとが、彼女・・・ 著:タゴールラビンドラナート 訳:宮本百合子 「唖娘スバー」
・・・こうして新しい領分が開けたわけですから、その開けた直後は高まるというよりも寧ろ広まる時代、拡張の時代です。それが十八世紀の数学であります。十九世紀に移るあたりに、矢張りかかる階段があります。すなわち、この時も急激に変った時代です。一人の代表・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・ しらじらと夜が明けていたのである。 部屋は薄明るく、もはや、くらやみではなかったのである。 私は起きて、帰る身支度をした。 太宰治 「朝」
・・・半年程留守を明けて、変った事物を見聞して来るうちには、ドリスを忘れるだろうと云うのである。勿論漫遊だって、身分相応にするので、見て廻らなくてはならない箇所が頗る多い。墺匈国で領事の置いてある所では、必ず面会しなくてはならない。見聞した事は詳・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・ この男の姿のこの田畝道にあらわれ出したのは、今からふた月ほど前、近郊の地が開けて、新しい家作がかなたの森の角、こなたの丘の上にでき上がって、某少将の邸宅、某会社重役の邸宅などの大きな構えが、武蔵野のなごりの櫟の大並木の間からちらちらと・・・ 田山花袋 「少女病」
・・・窓を開けて、襟を外へ投げた。それから着物を脱いで横になった。しかし今一つ例の七ルウブルの一ダズンの中の古襟のあったことを思い出したから、すぐに起きて、それを捜し出して、これも窓から外へ投げた。大きな帽子を被った両棲動物奴がうるさく附き纏って・・・ 著:ディモフオシップ 訳:森鴎外 「襟」
・・・具体的から抽象的に移る道を明けてやらないで、いきなり純粋な抽象的観念の理解を強いるのは無理である。それよりもこうすればうまく行ける。先ず一番の基礎的な事柄は教場でやらないで戸外で授ける方がいい。例えばある牧場の面積を測る事、他所のと比較する・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・室内電燈のスウィッチの、ちょっと開けてみれば分るような簡単な故障でも、たいてい電燈会社へ電話をかけて来てもらうのが普通であるらしい。 些細なようなことで感心したのは、風呂を立ててもらうのに例えば四十一度にしてくれと頼めばちゃんと四十一度・・・ 寺田寅彦 「家庭の人へ」
出典:青空文庫