・・・と命名した球形の電磁石がつり下がっており、他の一方には陰極が插入されていて、そこから強力な陰極線が発射されると、その一道の電子の流れは球形磁石の磁場のためにその経路を彎曲され、球の磁極に近い数点に集注してそこに螢光を発する。その実験装置のそ・・・ 寺田寅彦 「B教授の死」
・・・前記の浴室より、もう少し左上に当たる崖の上に貸し別荘があって、その明け放した座敷の電燈が急に点火するときにそれをこっちのベランダで見ると、時によっては、一道の光帯が有限な速度で横に流出するように見えることがある。これはたぶんまつ毛のためやま・・・ 寺田寅彦 「人魂の一つの場合」
・・・ その日、初頼という方が、持って来た下すった香奠が、将校方から十五円、兵士一同から二十円……これは皆さんが各々の気心で下すったもので、兵士方は上官から御内意があって、一人につき二銭から三銭のがなれど、人数にすれば二十と云う金高になるとい・・・ 徳田秋声 「躯」
・・・もし陛下の御身近く忠義こうこつの臣があって、陛下の赤子に差異はない、なにとぞ二十四名の者ども、罪の浅きも深きも一同に御宥し下されて、反省改悟の機会を御与え下されかしと、身を以て懇願する者があったならば、陛下も御頷きになって、我らは十二名の革・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・御飯焚のお悦、新しく来た仲働、小間使、私の乳母、一同は、殿様が時ならぬ勝手口にお出での事とて戦々恟々として、寒さに顫えながら、台所の板の間に造り付けたように坐って居た。 父は田崎が揃えて出す足駄をはき、車夫喜助の差翳す唐傘を取り、勝手口・・・ 永井荷風 「狐」
・・・そうして単にその説明だけでも日本の文壇には一道の光明を投げ与える事ができる。――こう私はその時始めて悟ったのでした。はなはだ遅まきの話で慚愧の至でありますけれども、事実だから偽らないところを申し上げるのです。 私はそれから文芸に対する自・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・ 平田を先に一同梯子を下りた。吉里は一番後れて、階段を踏むのも危険いほど力なさそうに見えた。「吉里さん、吉里さん」と、小万が呼び立てた時は、平田も西宮ももう土間に下りていた。吉里は足が縮んだようで、上り框までは行かれなかッた。「・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
・・・乗合一同皆思案にくれて居る中、午後四時頃になって一道の光明は忽ち暗中に輝いて見えた。それは、上陸の許否は分らぬがとにかく、和田の岬の検疫所へ行く事を許されたという事であった。上陸せんまでも、泊って居るよりは動いて居る方が善いというのは船中の・・・ 正岡子規 「病」
・・・乗合一同皆思案にくれて居る中、午後四時頃になって一道の光明は忽ち暗中に輝いて見えた。それは、上陸の許否は分らぬがとにかく、和田の岬の検疫所へ行く事を許されたという事であった。上陸せんまでも、泊って居るよりは動いて居る方が善いというのは船中の・・・ 正岡子規 「病」
・・・ あまがえるは一同ふうふうと息をついて顔を見合せるばかりです。とのさまがえるは得意になって又はじめました。「どうじゃ。無かろう。あるか。無かろう。そこでお前たちの仲間は、前に二人お金を払うかわりに、おれのけらいになるという約束をした・・・ 宮沢賢治 「カイロ団長」
出典:青空文庫