・・・は、中の部であるが六%にすぎず、「武辺の手柄を望み、一道にすく男」は、下の部であっても一二%にすぎず、あと八〇%は「人並みの男」に過ぎないのであるが、強すぎた大将の下では、上中下の二〇%の武士を戦死させ、人並みの猿侍のみが残ることになるから・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・貴家御一同御無事に候哉御尋申候。却説去廿七日の出来事は実に驚愕恐懼の至に不堪、就ては甚だ狂気浸みたる話に候へ共、年明候へば上京致し心許りの警衛仕度思ひ立ち候が、汝、困る様之事も無之候か、何れ上京致し候はば街頭にて宣伝等も可致候間、早速返報有・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・この地獄に似る混沌海の波を縫うて走る一道の光明は「道徳」である。吾人はここにおいて現代の道徳に眼を向ける。三 現代の因襲的道徳と機械的教育は吾人の人格に型を強いるものである。「人」として何らの霊的自覚なく、命ぜらるるがままに・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫