・・・境遇に向うその人の一貫した生活態度というものが在って、初めて互の友情の社会的なよりどころが与えられる。境遇が変っても、その変りかたに互の生活態度として納得の行くものがあり得ること、その境遇の変えかたに、相手の生活態度として評価し尊敬し得るも・・・ 宮本百合子 「異性の間の友情」
・・・ 如何なる事に於ても、其を一貫した「実」と云うものがなければ、其は、その形骸のみをそなえて最も尊い霊を失ったものである。 世の中のあらゆるものに「真」のないものは決して長生する事は出来ない。 聖ダンテの「神曲」は、何故今日まで不・・・ 宮本百合子 「大いなるもの」
・・・所謂ロシア気質というものは、イリフ、ペトロフ両人の極めてダイナミックな社会精神と感情の活動を一貫してどこにも古風なバラライカの響となってつたわってはいない。彼等は新しい人間たち、新しい文学のつくりてである。それにもかかわらず、「黄金の仔牛」・・・ 宮本百合子 「音楽の民族性と諷刺」
・・・現代文学が主題とするヒューマニズム探求の一環として見た場合、D・H・ローレンスの文学は、こんにちの現実を解明するためにローレンス氏方式ではすでに不十分であることを、明かにして来ているのである。 敗戦後の日本に、肉体派とよばれる一連の文学・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・メーデーを目ざして、われわれが反動支配階級の文化にたいして決定的闘争を高めてゆく、その血の通った一環として理解されなければならないのだ。 例えばプロレタリア・農民の男が、ファシズムに抗し、帝国主義侵略戦争に反対して勇敢に起ったとしても、・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ 手記の集められたこの一巻を読むとき、わたしたちは、手記そのものから、現代の人類的な課題をじかによみとることは出来にくいかもしれない。けれども、十七篇の一つ一つは、よしんばそれが断片的であろうとも、そのうちには本質的な問題がふくまれてい・・・ 宮本百合子 「『この果てに君ある如く』の選後に」
・・・特に、世界とその一環としての日本の文学が、質的に大きい変転を行い、波瀾を経つつある最近の「十年間あまり、国文学研究の中道が、殆どすべて本文校訂とか稿本作成とか、考証とか、索引作成とかいう資料整理的の仕事それ自体を目的とする範囲を出なかったこ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・文芸思潮史としてこの一巻をまとめることを念願したとあとがきに書かれているが、批評及び文芸思潮史の方法として、ここに示されている数歩は、日々があわただしくて人々の視線も上ずっているような今日の世相のなかで、決して瞠目的な形ではあり得まいが、し・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・その実際は、六・三制の混乱と、最近全国の専門・大学男女学生が教育防衛復興闘争の一環として立ち上りはじめた学問の自由と独立擁護および授業料ねあげ反対の大運動にもあらわれている。 学生のこういう意志表示を学生の本分にもとるという意見がある。・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
・・・全プロレタリアートの戦線の前進として、その文学運動が推し進められる基本的発展のまじめな一環であると思います。〔一九三三年十一月〕 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
出典:青空文庫