・・・弱いあきらめや、浅はかな見越しをすて真実の世界をつなぐ花の環の一環として、平和を守る世界正義の下へ日本の勤労階級の正義をも結び合わしてゆかなければならない。これこそ、今年のメーデーに期待される重大な一つの歩み出しであると信じる。〔一九四八年・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・大いに期するところは、人類と文学との継続の鎖に更に輝やかしい一環を寄与したい心であると思う。その心の動因は、人間精神の成長とその合理への方向への信頼であり、他の面からそのことを云えば、不合理なものへの承服しがたさへの確信と、その承服しがたき・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・そのようにして綜合し整理し、価値を明らかにした批評は、昔のロシアでベリンスキーやチェルヌイシェフスキーの文芸評論が、解放運動の強力な一環として果した革命的役割を果すはずです。蔵原惟人の評論も、佐多、松田、壺井、宮本の小説も、新しく書き出した・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ソヴェト同盟で列車妨害は反革命陰謀者たちが主要な一環として実行した挑発行為であった。 九州でダイナマイトを仕かけた事件は写真入りで報道された。しかし犯人も出なければそのダイナマイトというものが果して本当に爆発するものであったかなかったか・・・ 宮本百合子 「犯人」
・・・世界の革命の一環としての日本の革命的人民の文学をもたなければならない。それはわれわれ革命的民主主義作家の任務なのだから、いまはわたしに文学の仕事をさせておく方が大局からみて能率的である。教育委員には教育に関係をもつ人の方がふさわしい。そう言・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・その工場内の闘争が、ひろくは世界プロレタリアートの革命的高揚の一環としての意味をつかんで、どうつかまれているかということが眼目だ。徳永が国際的なプロレタリア作家だとすれば、それはただ「太陽のない街」がドイツ語に訳されたということではない。一・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・速く進む日本の歴史の中ではブルジョア民主主義と人民的な民主主義と並んで重って或る期間進展してゆくから、人民民主主義を否定しようとするならいや応なく反人民的になり、国際的ファシズムに結ばれなければ、その一環とならなければ、資本主義としての存在・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・ベランジェの小さい一巻とハイネの詩集ぐらいが彼の全財産である。 彼の周囲の人々はすべて、卑劣な奴も、智慧のある奴も狡い奴も、ゴーリキイに、彼等と一緒に住むことは出来ないと思わせるような人々ばかりであった。「何とか他に生きようはないものだ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ 初めから声まで今日の客は、すべて一貫したリズムがあった。梶が出て行ってみると、そこに高田が立っていて、そしてその後に帝大の学帽を冠った青年が、これも高田と似た微笑を二つ重ねて立っていた。「どうぞ。」 とうとう門標が戻って来た。・・・ 横光利一 「微笑」
・・・形而上学でも倫理学でも宗教学でもすべて先生の独特な原理で一貫している。僕たちはその講義を聞いて来たのだ。よく解ったとはいえないけれども、よほど素晴らしいもののように思う。しかし自分たちが敬服したのは、その哲学よりも一層その人物に対してである・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫