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・・・いつも身綺麗にしていて、衣類や持物に、その時々の流行を趁っている。或時僕が脚本の試みをしているのを見てこんな事を言った。「どうもあなたのお書きになるものは少し勝手が違っています。ちょいちょい芝居を御覧になったら好いでしょう」これは親切に言っ・・・
森鴎外
「百物語」
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・・・この衣類の主が夕方には、はでな湯帷子を著て、縁端で凉んでいる。外から帰って著物を脱ぎ更えるのを不意に見て、こっちで顔を背けることもある。私はいつとなくこの女の顔を見覚えたが、名を聞く折もなく、どこの学校に通うと云うことを知る縁もなかった。女・・・
森鴎外
「二人の友」