-
・・・ 足のあるところは、青い青い海の、うねりうねる波の上になっていて、ただ黒坊主のように、三つの影が、ぼんやりと空間に浮かんで見えたのであります。 これを見た、みんなのからだは、急にぞっとして身の毛がよだちました。「いつか行方のわか・・・
小川未明
「黒い人と赤いそり」
-
・・・長き頸の高く伸したるに、気高き姿はあたりを払って、恐るるもののありとしも見えず。うねる流を傍目もふらず、舳に立って舟を導く。舟はいずくまでもと、鳥の羽に裂けたる波の合わぬ間を随う。両岸の柳は青い。 シャロットを過ぐる時、いずくともなく悲・・・
夏目漱石
「薤露行」