・・・だんだん大きくなるにつれて、私は、おっかなびっくりになってしまった。洋服いちまい作るのにも、人々の思惑を考えるようになってしまった。自分の個性みたいなものを、本当は、こっそり愛しているのだけれども、愛して行きたいとは思うのだけど、それをはっ・・・ 太宰治 「女生徒」
・・・という題で、私が田舎の畠で実際に目撃しました珍風景を、でたらめに大いにれいの行をかえて書いてみまして、それをおっかなびっくり、「あけぼの」の詩人のひとりに見てもらいましたところ、面白い、という事になり、その「あけぼの」の誌上に掲載されるとい・・・ 太宰治 「男女同権」
・・・ 頗るしょげて、おっかなびっくり、わが家の裏口から薄暗い内部を覗くと、「あら、おかえり。」と艶然と笑って出迎えたのは、ああ、驚くべし、竹青ではないか。「やあ! 竹青!」「何をおっしゃるの。あなたは、まあ、どこへいらしていたの・・・ 太宰治 「竹青」
・・・どうせ映画の予告篇、結果に於いては、宣伝みたいな事になってしまうのだから、出版元も大目に見てくれるにきまっていると思われる、などとれいの小心翼々、おっかなびっくりのあさましい自己弁解をやらかして、さて、とまた鉄仮面をかぶり、ただいまの抜書き・・・ 太宰治 「鉄面皮」
・・・と居候の弟は、おっかなびっくり合槌を打つ。 兄は真面目に、「昔は出来たのだが、いまは人手も無いし、何せ爆弾騒ぎで、庭師どころじゃなかった。この庭もこれで、出鱈目の庭ではないのだ。」「そうでしょうね。」弟には、庭の趣味があまりない・・・ 太宰治 「庭」
・・・そうして、ストイックな生活をしている人を、けむったく思いながらも、拒否できず、おっかなびっくり、やたらに自分を卑下してだらだら交際を続けているものである。三つには、杉浦透馬に見込まれたという自負である。見込まれて狼狽閉口していながらも、杉浦・・・ 太宰治 「花火」
出典:青空文庫