・・・大手町の方を眺めると、歌声のとどろきと旗の波が刻々増大し、つきぬ流れは日本橋へ向っている。女のひとも、どっさり今日は行進している。目を据えてみていると、歌いながら、笑いながら、行進の中から、合図の手を振るひとたちがある。我を忘れて声をあげ、・・・ 宮本百合子 「メーデーに歌う」
・・・ そして、これらの季節の思い出のどの一節にも、遠くにか近くにか手風琴と歌声とが響いていて、そこには微かにロシヤの民謡につきものの威勢のいい鋭いかけ声もきこえているのである。 宮本百合子 「モスクワ」
・・・妻が夫の乱行に耐えず、また冷遇にたえがたくて離婚したくても、夫が承知しなければ、生涯ただ名ばかりの妻で、保姆と家政婦の日々を暮さなければならなかった。夫である男と妻となる女とが、互の愛と社会的責任において、家庭を営んでゆくのが結婚の原則であ・・・ 宮本百合子 「離婚について」
出典:青空文庫