・・・ 僅に、九州や中国の、徳川からの監視にやや遠い地域の大名たちだけが、密貿易や僅かの海外との交渉で、より新しい生活への刺戟となる文化を摂取した。維新に、薩長が中心となったということは、深い必然があったのである。 ところで、この明治維新・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・に対しては懐疑的であるし、監視的なこころもちを抱いている。それは、本当に当然なことではなかろうか。今日の饑餓と社会生活全面の破綻をもたらした戦争について、人民を其処へ追い込むまいと献身し、わが身を犠牲とした代議士が、一人でも在っただろうか。・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・けれども、いわゆる世論調査がどのようにして行われるか、そしてあらわれた世論調査の結果はどのように利用されつつあるか、ということについて、必要な監視を自覚している人々は、まだ決して多くない。 つい先頃、吉田内閣ができようとしていた数日前、・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・看守が用便中のものを監視する為の仕かけである。窓のない暗い便所にかがんでいる間、自分の頭は細かくいろいろな方面に働いた。そして、聞いたばかりの短い言葉から推察されるあらゆる外の情勢を理解しようとして貪慾になった。出て来て手を洗いながら又訊い・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・と、イガグリ頭を仰向けるように眼を瞑り、節をつけて何かの漢詩を吟じた。古来孝子は親の、名を口にするのさえも畏れ遠慮するというような意味のことをうたった詩である。「わかりますか? え? よく聞いて下さい」 もう一遍、朗吟して、・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・政府や文部委員会が、こんどの議会で現実に解決する能力のないこんにちの教育問題から逃げる楯として、国宝再認識問題を過度に利用しないようにわれわれは監視しなければならない。 日本の「国宝」はあわれな歴史をもっている。明治維新の混沌期にもしフ・・・ 宮本百合子 「国宝」
・・・て来た働く人々の間からは、スパイ制度と憲兵の活動によって、労働者階級として読むべき政治的な書物は根こそぎ奪われていたし、働く人々の日常からの判断としておこる当然の戦争に対する疑問や批判も、刑罰をもって監視されて来た。 したがって、八月十・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・しかも政治の激動期に、朱子学が或る役割を持っていたことなどから、漢詩が伝統の文学の形式から、直接の日常の感情表現の手段となって行った。明治維新というものがその一面に下級武士の大きい力のあらわれをもっているという事実が、こういう点にも見られる・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・日本出版協会が今後民主的出版を守るために果してどのように行動するかは、きびしい監視を必要とする。 三、ラジオの民主化が日本の民主化における重要な課題であることは、すでにのべたとおりである。日本のラジオの民主化のために、一九四六年に、・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・を書きつづけつつ、その人生の脂っこさ、塵っぽさにやり切れないから、一日に一つは漢詩をつくって息をぬくのであると云って、白鶴に乗じて去るというような境地に逃げたことは、明治大正のヨーロッパ化した文学精神における文人気質の何を語っているであろう・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫