・・・水ががりがり擦ったんです。そら。〕実にいい礫だ。まっ白だ。まん円だ水でぬれている。取ってしまった。誰かがまた掻き廻す。もうない。あとは茶色だし少し角もある。ああいいな。こんなありがたい。あんまり溯る。もう帰ろう。校長もあの路の岐れ目で待・・・ 宮沢賢治 「台川」
・・・ 一本のでんしんばしらが、ことに肩をそびやかして、まるでうで木もがりがり鳴るくらいにして通りました。 みると向うの方を、六本うで木の二十二の瀬戸もののエボレットをつけたでんしんばしらの列が、やはりいっしょに軍歌をうたって進んで行・・・ 宮沢賢治 「月夜のでんしんばしら」
・・・そして黒い瘠せた脚をがりがり掻きました。土神は一羽の鳥が自分の頭の上をまっすぐに翔けて行くのを見ました。すぐ土神は起き直って「しっ」と叫びました。鳥はびっくりしてよろよろっと落ちそうになりそれからまるではねも何もしびれたようにだんだん低く落・・・ 宮沢賢治 「土神ときつね」
・・・おまえたちが青いけし坊主のまんまでがりがり食われてしまったらもう来年はここへは草が生えるだけ、それに第一スターになりたいなんておまえたち、スターて何だか知りもしない癖に。スターというのはな、本当は天井のお星さまのことなんだ。そらあすこへもう・・・ 宮沢賢治 「ひのきとひなげし」
出典:青空文庫