・・・それ故、徒に新奇を競うて、外国人の営む生活の形骸を真似るのは、全く笑うべく悲しむべきことです。 併し、一国の文化、社会状態を観察した場合に、何時も、その裏面、消極的方面のみに注目するのは、果して妥当な態度でしょうか。 他人の話を聞き・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・談林派の俳諧というものは、その先達であった貞門と同じように俳諧を滑稽の文学と見ており、談林は詩型のリズムに自由を求めると共に懸詞にも日常語を奔放にとり入れ、奇想巧妙な譬喩を求めるあまり、遂には、山の手ややつこりや咲いた花盛引・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・「では、起草委員を選んでそのことに当りたいと思います。選出方法は」「議長一任!」 大会は、朝鮮プロレタリア作家同盟ばかりでなく、他の友誼団体へのメッセージ起草をも決議した。 討議は正味八時間余ブッ通して行われ、日本プロレ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 憲法は一国の政治の基準をなす重大なものだのに、草案の起草者たちは、常識からも明白なこの誤り・失敗について、どうして平気なのだろうか。本当に奇怪なことだと思った。 草案第十三条に「すべて国民は法の下に平等であって、人種・信条・性別・・・・ 宮本百合子 「矛盾とその害毒」
・・・美を装い艶を競うを命とする女、カラーの高さに経営惨憺たる男、吾人は面に唾したい、食を粗にしてフェザーショールを買う人がある。家庭を破壊してズボンの細きを追う人がある。雪隠に烟草を吹かし帽子の型に執着する子供を「人」たらしむべき教育は実に難中・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫