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・・・お役人方に伺いましたが、多分忌中だから御沙汰がないのだろうと申すことで」 九郎右衛門は眉間に皺を寄せた。暫くして、「大きい車は廻りが遅いのう」と云った。 それから九郎右衛門は、旅の支度が出来たかと問うた。いずれお許が出てからと、宇平・・・
森鴎外
「護持院原の敵討」
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・・・前の細君が病気で亡くなって忌中でいると、ある日大きな鯛を持って来て置いて行ったものがあったそうだ。箕村がひどく驚いて、近所を聞き廻ったり何かして騒ぐと、その時はまだ女中でいたお梅さんが平気で、これはお稲荷様の下さった鯛だと云って、直ぐに料理・・・
森鴎外
「独身」