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・・・ もっとも、彼は部下の余興を見なければ、酒が咽へ通らないという奇病を持っていたから、その鯨のような飲酒欲を満足させるためには、兵隊たちは常に自分の隠し芸をそれぞれストックして置く必要があった。 余興の中で、隊長を喜ばせるのは、何とい・・・
織田作之助
「昨日・今日・明日」
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・・・その処方通りにしたら数日にしてこの厄介な奇病もけろりと全快した、というのである。この患者は生れてその日までまだ米の飯というものを喰ったことがなかったという話であった。 小松の若先生でも楠先生でも、もし無事だったらまだ生きておられてもいい・・・
寺田寅彦
「追憶の医師達」