・・・女の子の着物は真赤であった。灸の母は婦人と女の子とを連れて二階の五号の部屋へ案内した。灸は女の子を見ながらその後からついて上ろうとした。「またッ、お前はあちらへ行っていらっしゃい。」と母は叱った。 灸は指を食わえて階段の下に立ってい・・・ 横光利一 「赤い着物」
・・・足利時代からあったお城は御維新のあとでお取崩しになって、今じゃ塀や築地の破れを蔦桂が漸く着物を着せてる位ですけれど、お城に続いてる古い森が大層広いのを幸いその後鹿や兎を沢山にお放しになって遊猟場に変えておしまいなさり、また最寄の小高見へ別荘・・・ 若松賤子 「忘れ形見」
・・・のみが続き、住民たちは土産の織物で作った華やかな衣服をまとっている。さらに南の方、コンゴー王国に行って見ると、「絹やびろうど」の着物を着た住民があふれるほど住んでいる。そうして大きい、よく組織された国家の、すみずみまで行き届いた秩序があり、・・・ 和辻哲郎 「アフリカの文化」
出典:青空文庫