・・・ しかし、それはうまく行っていない。急速に変化した情勢は現在サークル活動の理解の立てなおしを要求している。創作においてもわれわれがプロレタリア作家として互に要求しているだけ雄大で高度で、かついきいきとしたプロレタリアートの生活描写におい・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・という格言を一分も忘れない企業家の利益のために使われていることの人間らしくなさに苦しんで、アメリカの労働者は、はじめてのメーデーに八時間の労働、八時間の休息、八時間の教育というスローガンをかかげたのであった。 労働時間のことは、労働組合・・・ 宮本百合子 「いのちの使われかた」
・・・ グラフィーラの生活は、ドミトリーのその急速な社会生活の拡大について、一緒にひろがってくることは出来なかった。彼女の地平線は、昔ながらに労働者住宅の壁までで止っている。台所と洗濯桶と亭主とワーリカが命である。「――俺の全生活が今開い・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
近代企業としての映画は、経営の上にも技術の上にも急速な発達をとげているのだが、映画に扱われている女の生活というものは一様にある水準に止まっている。技術的にはアメリカやフランスの映画が先へ歩いて行っている部分のあることは明か・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・女性総体としての社会的経験が急速に多様になり、複雑になって来ているわけなのだが、そのようにして社会の新しい水脈に立った娘さんたちが、どのように自分の経験を感じながら生きているのだろう。自分一個のさまざまの経験や気持や希望を、自分のものである・・・ 宮本百合子 「女の自分」
・・・リオンの絹織工が大規模のストライキを行ったのにつづいて、ブランキーの反抗があり、急速に発展した資本主義の矛盾に対して勤労階級の反抗が沸き立っていた。パリには、八万五千人ものドイツ亡命者がいた。当時のドイツの野蛮な圧迫が、人間らしく社会の幸福・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・の活動の旺であった時代、伊藤野枝があなたのとなりに住んでいた時代、近くは急速な思想的動揺、歴史の転廻の時代、あなたはいつも其等の新興力に接触を保ち、作家として其等に無反応であるまいとする敏感性を示されましたが、しかし、それは常にあなたとして・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・ヨーロッパの中産階級はそのころから急速に経済能力の不安を感じはじめていた。特権階級の者は、当時なお強固な基礎を失っていなかったし、労働者階級は失業や賃下げに対して闘って、労働して生きてゆく大衆としての力をもっている。ノッティンガムの礦夫の息・・・ 宮本百合子 「傷だらけの足」
・・・帰って休息いたせ」 竹内数馬の幼い娘には養子をさせて家督相続を許されたが、この家はのちに絶えた。高見権右衛門は三百石、千場作兵衛、野村庄兵衛は各五十石の加増を受けた。柄本又七郎へは米田監物が承って組頭谷内蔵之允を使者にやって、賞詞が・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・貧、富、男、女、層々とした世紀の頁の上で、その前奏に於て号々し、その急速に於て驀激し、その伴奏に於てなお且つ奔闘し続ける、黙示の四騎士はこれである。もしも黙示の彼らが、かかる現前の諸相であると仮定したなら、彼らの中の勝者はいずれであるか。曾・・・ 横光利一 「黙示のページ」
出典:青空文庫