・・・ 矢部は父のあまりの素朴さにユウモアでも感じたような態度で、にこやかな顔を見せながら、「そりゃ……しかしそれじゃ全く開墾費の金利にも廻りませんからなあ」 と言ったが、父は一気にせきこんで、「しかし現在、そうした売買になってる・・・ 有島武郎 「親子」
・・・しかし僕は、ほかの家主みたいに、証書のことなどにうるさくかかわり合うのがいやなたちだし、また敷金だとてそれをほかへまわして金利なんかを得ることはきらいで、青扇も言ったように貯金のようなものであるから、それは、まあ、どうでもよかった。けれども・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・「パリ人というものは自身や他人の金利のことについて口を出さぬ。もしこれに一言でも触れようものならパリ生活の秩序は根底から破壊されてしまうのだ。それは日本に於ける義理人情の如きもので、この生活を破壊して自由はないのであった。思想は生活の自由を・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・普通の金利七八分の配当を得ようとするのは合理的なんだから労働者だってそれが悪いとは云えやしない。それ以上取ろうとするからやかましいんでこれできかなけりゃあ労働者の方が悪い、すべて、与え、而して取るなんだ。――どうだね、一つやって見たらって云・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫