・・・だれの責任であるとか、ないとかいうあとの祭りのとがめ立てを開き直って子細らしくするよりももっともっとだいじなことは、今後いかにしてそういう災難を少なくするかを慎重に攻究することであろうと思われる。それには問題のつり橋のどの鋼索のどのへんが第・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・その説はすぐに我邦の専門家の間にも伝えられ、考究され、紹介され、応用もされていた。今日物理学に興味をもつ人でボーアの名前とその仕事の一般を知らない人はおそらく一人もないはずである。 ところがこれほど専門家の目には顕著な人物の名前が「世間・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 前記の小説家もこんなことぐらいはもちろん承知の上でそれとは少し別の意味でそう云ったには相違ないが、しかし不用意に読み流した読者の中には著者の意味とちがった風に解釈して、それだから概括的に小説は高級なもので随筆は低級なものであるという風・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・今回地震の起因のごときも、これを前記の定説や仮説に照らして考究するは無用の業ではない。これによって少なくも有益な暗示を得、また将来研究すべき事項に想い到るべき手懸りを得るのではあるまいか。 地震だけを調べるのでは、地震の本体は分りそうも・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・ 具体的に言うことができないのは遺憾であるが、自分の知っている多数の実例において、科学者の目から見れば実に話にもならぬほど明白な事がらが最高級な為政者にどうしても通ぜずわからないために国家が非常な損をしまた危険を冒していると思われるふし・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・そうした行列の中を一台立派な高級自動車が人の流れに堰かれながらいるのを見ると、車の中には多分掛物でも入っているらしい桐の箱が一杯に積込まれて、その中にうずまるように一人の男が腰をかけてあたりを見廻していた。 帰宅してみたら焼け出された浅・・・ 寺田寅彦 「震災日記より」
・・・ ともかくも、こういう大切な観測事業をその日暮しその年暮しになりやすい恐れのある官僚政治の管下から完全に救出して、もう少し安定な国家の恒久的機関を施定することが刻下の急務ではないかと思われる。そうすれば凶作問題なども自ずから解決の途につ・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・おり、その上に当代の有名な学者の数々を聚めているのであるから、この際思い切って気象台の観測事業の範囲を徹底的に拡張して、そうして前述のごときあらゆる天災の根本的研究とその災害に対する科学的方策の綜合的考究に努力せしめるのが最も時宜に適したも・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・為政家が一国の政治を考究する時、社会経済学者がその学説を組み立てる時、教育者がその教案を作製する時、忘れずに少時このレコードの音に耳を傾けてもらいたい。あらゆる心と肉の労働者もその労働の余暇にこれらの「自然の音」に親しんでもらいたい。そうい・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・そうして周到な津浪災害予防案が考究され、発表され、その実行が奨励されるであろう。 さて、それから更に三十七年経ったとする。その時には、今度の津浪を調べた役人、学者、新聞記者は大抵もう故人となっているか、さもなくとも世間からは隠退している・・・ 寺田寅彦 「津浪と人間」
出典:青空文庫