・・・右手より曹長先頭にて兵士一、二、三、四、五、登場、一列四壁に沿いて行進。曹長「一時半なのにどうしたのだろう。バナナン大将はまだやってこない胃時計はもう十時なのにバナナン大将は帰らない。」正面壁・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
・・・ すると愕ろいたことは学校帰りの子供らが五十人も集って一列になって歩調をそろえてその杉の木の間を行進しているのでした。 全く杉の列はどこを通っても並木道のようでした。それに青い服を着たような杉の木の方も列を組んであるいているように見・・・ 宮沢賢治 「虔十公園林」
・・・民主の夜あけがきたとき、すぐその理性の足で立って、嬉々と行進しはじめられなかったほど日本の知性は、うちひしがれていたのであった。 日本にエリカ・マンはありえなかった。けれども、いまやっと、人間の基本的人権の確立がいわれるようになったとき・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・時代的にいえば、アルノー夫人の後進者です。そして彼女の腹違いの妹のシルヴィが、生粋のパリの市民で――プロレタリアートで、イリュージョンを持たず、機智的で実務家で、恋愛と結婚とをはっきり区別し、「そりゃ恋人には危っかしくたって面白い人がいいけ・・・ 宮本百合子 「アンネット」
・・・それはそういう立場におちいった作家たちにしろ、あれだけ深刻な戦争の現実の一端にふれ、国際的なひろがりの前で後進国日本の痛切な諸矛盾を目撃し、日に夜をつぐいたましい生命の浪費の渦中にあったとき、一つ二つ、あるいは事態そのものについて、一生忘ら・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・ 多くの作家が、これまでの歴史性による社会感覚の欠如から、今日における自分の発展と創造力更新のモメントを逃がしているように、日本の人民は、智慧と判断を否定し、声をおさえる政策のために、明日死ぬかもしれないその夜の家信でさえ、無事奉公して・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・には、心と耳とをかたむけてそれをきき、いつしか自分もその行進にまきこまれて足をすすめ出すような音楽がみちています。この音楽と、いつか展望にのった高村光太郎の「ブランデンブルグ」とを思い比べずにはいられません。何というちがいでしょう。ここにわ・・・ 宮本百合子 「鉛筆の詩人へ」
・・・浦和の方から、女子青年の娘さんたちが久留米絣の揃いの服装、もんぺに鉢巻姿で自転車にのって銀座どおりを行進して行ったのだそうだ。それは綺麗だったけれど、そのあとから制服の背中に黄色い布で長い木剣を斜に背負って自転車にのった娘さんの一隊がきかか・・・ 宮本百合子 「女の行進」
『集団行進』をいただき、大変に興味ふかく、得るところも多く拝見しました。巻頭の序文によると、この集は最近一年間において短歌をつくる労働者作家が非常にふえたことを一つの特徴として示しているとのことです。 この一年と云えば私・・・ 宮本百合子 「歌集『集団行進』に寄せて」
・・・に乗ってパリ市中を行進した気持は察するに余りある。 フランスの勝利は、マリアにとって二重の勝利を意味した。彼女の愛するポーランドは一世紀半の奴隷状態から解かれて独立した。マリアは兄のスクロドフスキーに書いた。「とうとう私たちは、永年・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
出典:青空文庫