・・・ 日本型の文化躍進の特徴は、日本の社会が明治以来不具のまま置かれて来た社会機構全般の後進性に伴っていて、奥ゆきなく、反射的で、真の意味で自立した人間の文化としての伝統を摂取し、それを生かしてゆく強靭な理性の弾機をもち得ないで来ている。皮・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・ところが、醜として撮影された部分が人生の情景として、感情をもって見れば常に必しも醜ではなく、首都の美観の標本として示されたものの中には、却って東洋における後進資本主義の凡庸なオフィスビルディングの羅列のみしかないのもあった。都市の美醜、人生・・・ 宮本百合子 「日本の秋色」
・・・ きょうに予感されるこの推移と変革の過程では、一九四五年八月からのち、日本の文学評論の上に活溌に云われはじめた「後進日本」の知性を制約している社会条件の解剖さえも、「既存の通念」の一つと化しはじめている。なぜなら、わたしたちは、「おくれ・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・四肢の自由を失って後病床に釘づけにされていながら、彼は後進者の教育の仕事を引受けて研究会の指導などをした。このような状態の時オストロフスキーは更に一つの打撃に堪えなければならなかった。それは両眼の失明である。オストロフスキーは自身によって書・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・たをするのが正しいかと云えば、それは、日本の働く婦人大衆の間から自然にうまれた声ではなくて、日本の労働者階級のすべての問題、人民の真の民主化にかかわりをもつあらゆる問題を、なるたけ国際的に前進している行進の例からひきはなして、日本として、独・・・ 宮本百合子 「婦人デーとひな祭」
・・・ スペインが流血の苦難を通じて世界文化・文学の領域の中に新しい自身の価値を創造しつつ、同時にヨーロッパの文化的良心の沸騰する発露、更新力となりつつあることを疑うものは今日いないのである。『文芸』の「現在中国文学界鳥瞰図」「抗日作・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 最近の十数年間、特に太平洋戦争がはじまってからの五年間にわたしたちの経験した辛酸の内容をつまびらかに観察すれば、最後のあがきにおいて以上の諸関係がどんな程度にまで亢進し、ついに破局したか、明瞭である。 日本の社会心理の最底辺にとっ・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・だから、中国に対する日本の後進国帝国主義の侵略の結果は、その潮のさしひきの間に三国干渉というような微妙な表現で、当時の各列強間に中国の部分的植民地化のきっかけをもたらした。日露戦争のとき、旅順口の攻撃は主として英国の海軍によって行われたもの・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・小さいおくれた日本にも四世紀を経たヨーロッパの歴史の波が、おのれの歴史的現実として存在している。後進資本主義国であり、天然資源の貧寒な条件におかれているだけ、一方に世界の帝国主義的な段階の特質をつよくあらわして来た。そうでなかったら、日本が・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
・・・今年のメーデーによろこんで行進した人々の数は、世界第二位であった。民主憲法というならば、戦争の終ったこと、野蛮な軍事権力の崩れたことをよろこんで、雨の日のなかを、ああやって行進した日本人の九割五分の人々の嬉しい日、五月一日こそ、愉快な一致と・・・ 宮本百合子 「メーデーぎらい」
出典:青空文庫