・・・当選しようとすれば、アメリカ人民の要求を理解し、それに応える決心をしなければならないということについて、トルーマンがデューイよりも分別をもっていたからであった。ことばをかえていえば、アメリカの分別ある人々が、自分たちの要求をはっきり示すこと・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・もし又、はっきり分らなければ、そのとおりに、はっきり分らないと答える習慣を持たなければなりません。今すぐ返事が出来ないから、待ってくれという場合もあるでしょう。いずれにせよ、明白に責任のある答えをする習慣を身につけなければなりません。・・・ 宮本百合子 「新しい躾」
・・・彼には、堪える丈堪えたのだと云う自己に対する承認とともに万事を放擲した心境が、一種の感傷癖でなつかしく思われたのだろう。 又、彼のすばしこさで、この事件に対する世人の good will も分ったに違いない。彼の、「自分の決心は定って居・・・ 宮本百合子 「有島武郎の死によせて」
・・・は一つの古典として読まれるに堪えるものになったであろう。 葉子が自分の乳母のところで育てさしている娘定子に執着し、愛している情は筆をつくして描かれている。葉子の優しい心、女らしさ、母らしさの美を作者はここで描こうとしている。 定子を・・・ 宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
・・・と答えた。れんの遽しい今にも何かにつき当りそうなせき込んだはい、はいの連発ではない。艶のある眼で、流眄ともつかず注目ともつかない眼ざしをすらりとさほ子の頬の赤い丸顔に投げ、徐ろに「はい」と応えるのであった。けれども、両手はエプロンの上に、品・・・ 宮本百合子 「或る日」
・・・ それだけでさえも、気のせまいお君には、堪えるのが一仕事である。 始め、妙に悪寒がして、腰が延びないほど疼いたけれ共、お金の思わくを察して、堪えて水仕事まで仕て居たけれ共、しまいには、眼の裏が燃える様に熱くて、手足はすくみ、頭の頂上・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・ 揚げ幕の後で一種異様にちりぢりばらばらのような刺戟的な大勢の掛声がそれに応える。同時に、左右の花道から、鼓、太鼓、笛、鉦にのって一隊ずつの踊り子が振袖をひるがえして繰り出して来た。彼方の花道を見ようとすると、もう此方から来ている。華や・・・ 宮本百合子 「高台寺」
・・・銃後の婦人へ与えられる激励の言葉、また、婦人のそれに応える誓の言葉は、最大級の感情を内容とする文字をつかって、今日では一つの形式をこしらえている。白エプロンに斜襷の女のひとたちの姿が現れたところ、即ちそこに戦時の気分が撒かれなければならぬよ・・・ 宮本百合子 「祭日ならざる日々」
・・・いわゆる新人にとっても、傍からそれを目撃するものにとっても、これは堪えるに容易でない一つの愚弄である。 文学的新世代の萌芽 真の文学的新世代の萌芽は、そのようなむずかしく、渡るに難い文壇大路小路の地図を知らず、・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・活動に堪える力は最大まで社会のためにと、外の仕事に動員されるのだけれど、外の仕事ではつねに、いざとなると女はどうせ家庭に入る者だから、それが一番自然で貴重な女性の任務なのであるから、とたとえば肝心の労務委員会あたりも、女性の職場での福祉につ・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
出典:青空文庫