何より先に、わたし達はこれらの勇敢な同志たちがほんとは何の罪もなく全くの無罪であるという事をはっきり知らなければならないと思います。先頃求刑のあった最終日に同志佐野学は立って堂々と階級的闘士の無罪であることを述べました。抑・・・ 宮本百合子 「同志たちは無罪なのです」
・・・けれ共常からどこか毛色の変った学問の深い考のある女の事だから何か感じた事だろうと思って居た。けれ共最終の、「いつかは御わびをする事もあろうかと存じます」と云うのがきにかかってもしかすると書おきででもありぁしないかとさえ思った。けれ共・・・ 宮本百合子 「錦木」
・・・東條を頭目とする日本の戦犯者の国際裁判の最終日に、キーナン検事が、「正義を伴わない文明は背理である」といった言葉のうちには、人類の正義への評価があった。第一次大戦後、平和のための国際連盟にアメリカが、最大の能力をもちながら加入しなかったこと・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・そしてちょうど私の行った時最終日であった有名なニージュニの定期市――ゴーリキイが十代の時分この定期市の芝居で馬の脚をやったということのある定期市も、その一九二八年が最後で閉鎖された。ペルシャやカスピ海沿岸との通商関係は進歩して古風な酔どれだ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・しかし、三日間の大会で討議の時間は最終日にわずか二時間たらずになってしまったことは、問題の発展的な討議を不十分にした。 こんどの大会の第一日に、小説部会の報告があった。よく整理され、十分間で、一年間の小説部会としての報告が行われた。そし・・・ 宮本百合子 「両輪」
・・・今日の最終の患者ですから」「そうか。もう跡は皆な帰ったのか。道理でひどく静かになったと思った。それじゃあ余り待たせても気の毒だから、僕が見ても好い。一体どんな病人だね」「もう土地の医師の処を二三軒廻って来た婦人の患者です。最初誰かに・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
・・・植物採集に持って行くような、ブリキの入物に花櫚糖を入れて肩に掛けて、小提灯を持って売って歩くのである。 伝便や花櫚糖売は、いつの時侯にも来るのであるが、夏は辻占売なんぞの方が耳に附いて、伝便の鈴の音、花櫚糖売の女の声は気に留まらないので・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫