・・・「君たちのよんだ雑誌を田舎の子供へ、送ってやって、田舎の子供たちから、おかめどんぐりを送ってもらおうよ。」と、相談しました。「賛成、賛成!」 そのことを、三郎さんから、孝二くんにいってやると、すぐに返事がきて、田舎の子供たちも大・・・ 小川未明 「おかめどんぐり」
・・・ これを思う時、婦人開放も、婦人参政も、すべての運動は独り女子のみに限ったことでないことを知るであろう。 婦人が、男子に対立して、反抗した時代もやがて去ろうとしている。そして、新理想に輝く、社会建設の道へ、強い、真理と正義心との握手・・・ 小川未明 「婦人の過去と将来の予期」
・・・おきみ婆さんに打ち明けると、泣いて賛成してくれました。私もおおげさだったが、おきみ婆さんもおおげさだった。そのころ大宝寺小学校に尋常四年生の花組に漆山文子という畳屋町から通っている子がいて、芸者の子らしく学校でも大きな藤の模様のついた浴衣を・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・猫と杓子が寄ってたかって、戦争だ、玉砕だ、そうだそうだ、賛成だ賛成だ、非国民だなどと、わいわい言っているうちに、日本は負け、そして亡びかけたのです。 猫であり、杓子であるということは、つまり自分の頭でものを考えないということであります。・・・ 織田作之助 「猫と杓子について」
・・・それがいつか彼の口から出版屋の方へ伝わり、出版屋の方でも賛成ということで、葉書の印刷とか会場とかいうような事務の方を出版屋の方でやってくれることになったのだ。だからむろん原口や私の名も、そのうちにはいっていなければならぬはずだ。それを勝手に・・・ 葛西善蔵 「遁走」
・・・と尋ねてくれたとすれば彼はその名づけ方に賛成したかもしれない。しかし自分では「まだなにか」という気持がする。 人種の異ったような人びとが住んでいて、この世と離れた生活を営んでいる。――そんなような所にも思える。とはいえそれはあまりお伽話・・・ 梶井基次郎 「城のある町にて」
・・・学英語の初歩などを授けたが源因となり、ともかく、遊んでばかりいてはかえってよくない、少年を集めて私塾のようなものでも開いたら、自分のためにも他人のためにもなるだろうとの説が人々の間に起こって、兄も無論賛成してこの事を豊吉に勧めてみた。 ・・・ 国木田独歩 「河霧」
・・・「大に賛成ですなア」と静に沈重いた声で言った者がある。「賛成でしょう!」と近藤はにやり笑って岡本の顔を見た。「至極賛成ですなア、主義でないと言うことは至極賛成ですなア、世の中の主義って言う奴ほど愚なものはない」と岡本はその冴え冴・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・この意味においては、われわれは蘇露のコロンタイ女史の如く、一にも二にも託児所主義であって、男子も婦人も家庭外に出て働くのが理想的であるという考え方にはとうてい賛成できない。 子どもの哺乳と養育とは母親にとって、もっと重く関心と、心遣いせ・・・ 倉田百三 「婦人と職業」
・・・ お里はすぐ賛成した。 山の団栗を伐って、それを薪に売ると、相当、金がはいるのであった。 二 正月前に、団栗山を伐った。樹を切るのは樵夫を頼んだ。山から海岸まで出すのは、お里が軽子で背負った。山出しを頼むと・・・ 黒島伝治 「窃む女」
出典:青空文庫