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・・・汽車は高いところを走っているから、そういうゴミゴミした大都会の入口の町並一帯の直ぐ向うの広いコンクリの改正通りには均斉を保って街燈が立連り、トラックなどが走っているのまで、車窓からつきとおしに見渡せるのである。 紺足袋は娘に、もう直ぐだ・・・
宮本百合子
「東京へ近づく一時間」
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・・・の中より英文の道中記取出して読み、眼鏡かけて車窓の外の山を望み居たりしが、記中には此山三千尺とあり、見る所はあまりに低しなどいう。実に英吉利人はいずくに来ても英吉利人なりと打笑いぬ。長野にて車を下り、人力車雇いて須坂に来ぬ。この間に信濃川に・・・
森鴎外
「みちの記」