・・・骨までしゃぶるわ。餌食の無慙さ、いや、またその骨の肉汁の旨さはよ。一の烏 (聞く半ばより、じろじろと酔臥おふた、お二どの。二の烏 あい。三の烏 あい、と吐す、魔ものめが、ふてぶてしい。二の烏 望みとあらば、可愛い、とも鳴くわ・・・ 泉鏡花 「紅玉」
・・・純な子供の心はこの時に完全に大自然の懐に抱かれてその乳房をしゃぶるのである。 楊梅も国を離れてからは珍しいものの一つになった。高等学校時代に夏期休暇で帰省する頃にはもういつも盛りを過ぎていた。「二、三日前までは好いのがあったのに」という・・・ 寺田寅彦 「郷土的味覚」
・・・さらし木綿に梅干汁をひたして天日に乾かし、それを小さく切っていざという時しゃぶるのだそうです。成程これは渇きをとめるし、腹にいいしお菜になるし、さすが経験者の考えることです。水に入ってあせって泳ぐなということも強調されていました。そんなこと・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫