・・・「盲中国兵」「終戦日誌」「一人行く」「こういう女」などは、作者のアナーキスティックな資質は変らないが、戦時中彼女がこうむった抑圧の記録として、また中国捕虜のおそるべき運命の報告書として、強い感銘を与えるものであった。その後この作家が「地底の・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・ それがもっと悲惨なことになったのは、婦人の文学ばかりではありませんけれども、戦争が始まって以後、最近の終戦までの間の文学です。この間の日本の文学の在り方はどうであったか。作家が腰抜けだったということもいえます。しかし日本の作家はヨーロ・・・ 宮本百合子 「婦人の創造力」
・・・けれども、その動力となって軍事目的に協力したこれらの婦人団体は、終戦後の今日、破壊された食糧事情、混乱している経済事情によって日本の婦人が日夜名状しがたい困難を負うているに当って、どのような実際の助力を計画しているでしょうか。 戦時中婦・・・ 宮本百合子 「婦人民主クラブ趣意書」
・・・日本の全人民が収入の七割以上を税金にとられ、終戦費がそこから出されてもゆく、そのどこにワルト・ホイットマンの時代の社会があるというのだろう。 歴史の圧縮された二重の性格を貫いて、人民生活の安定を可能とする方向として人民的な民主主義という・・・ 宮本百合子 「真夏の夜の夢」
・・・私はこうした立場から終戦後の文化動向に関する一般報告を文化、芸術の面から行いたいと思う。〔一九四七年七月〕 宮本百合子 「明瞭で誠実な情熱」
・・・人民の汗と血が八十一億の金となって官僚をやしない二六四億の終戦処理費となっている。こういうことについて、はっきり目をあけて、自分たちの運命の主人となってゆく努力をしなければならない。〔一九四八年五月〕・・・ 宮本百合子 「目をあいて見る」
・・・ 終戦後日本にも平和をめざす婦人団体がいくつかつくられたけれども、それらの婦人団体の目標は多くの場合「まずめいめいのうちに心の平和を」とか「平和のために労資協調を致しましょう」とかいうものです。現代の戦争が資本主義そのものの病弊であると・・・ 宮本百合子 「求め得られる幸福」
・・・ 終戦と同時に、全軍隊の武装解除が行われた。軍需産業は直ちに閉鎖された。軍人は復員することになり、軍需産業に動員されていた五百五十万人の労務員は、殆んど全部が一旦は職場を失った。家々には、長い間待たれていた良人や父兄たちの姿が動くように・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫