・・・思想方面では、レーニンやトロツキイの共産主義者を始め、それの対蹠であるファッショや強権主義者等までが、多少みな間接にニイチェの影響を蒙つて居る。文学の方面では、ドストイェフスキイや、ストリンドベルヒや、アルチバセフや、アンドレ・ジイド等が、・・・ 萩原朔太郎 「ニイチェに就いての雑感」
・・・彼の心の中にどっしりと腰を下して、彼に明確な針路を示したものは、社会主義の理論と、信念とであった。「ああ、行きゃしないよ。坊やと一緒に行くんだからね。些も心配する事なんかないよ。ね、だから寝ん寝するの、いい子だからね」「吉田君、・・・ 葉山嘉樹 「生爪を剥ぐ」
・・・『僕も主義を改めて、あの百姓のお神さんに同情するさ。』 彼可厭と思った学生の声でしたから、私達は急いで停車場を出て、待たせて置いた宅の俥に乗って帰ったのでした。 私は彼女の方は、日本の人か知ら、他国の人じゃないかと思いました。で・・・ 広津柳浪 「昇降場」
・・・実際の真面目を言えば、常に能く夜を守らずして内を外にし、動もすれば人を叱倒し人を虐待するが如き悪風は男子の方にこそ多けれども、其処を大目に看過して独り女子の不徳を咎むるは、所謂儒教主義の偏頗論と言う可きのみ。一 女子は稚時より男・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・主実主義を卑んじて二神教を奉じ、善は悪に勝つものとの当推量を定規として世の現象を説んとす。是れ教法の提灯持のみ、小説めいた説教のみ。豈に呼で真の小説となすにたらんや。さはいえ摸写々々とばかりにて如何なるものと論定めておかざれば、此方にも胡乱・・・ 二葉亭四迷 「小説総論」
・・・ジネストは情なしの利己主義者でございます。けちな圧制家でございます。わたくしは万事につけて、一足一足と譲歩して参りました。わたくしには自己の意志と云うものがございません。わたくしは持前の快活な性質を包み隠しています。夫がその性質を挑発的だと・・・ 著:プレヴォーマルセル 訳:森鴎外 「田舎」
・・・その敬神尊王の主義を現したる歌の中に高山彦九郎正之大御門そのかたむきて橋上に頂根突けむ真心たふとをりにふれてよみつづけける吹風の目にこそ見えぬ神々は此天地にかむづまります独楽・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・ 全体、私たちビジテリアンというのは、ご存知の方も多いでしょうが、実は動物質のものを食べないという考のものの団結でありまして、日本では菜食主義者と訳しますが主義者というよりは、も少し意味の強いことが多いのであります。菜食信者と訳したら、・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
宮本顕治には、これまで四冊の文芸評論集がある。『レーニン主義文学闘争への道』『文芸評論』『敗北の文学』『人民の文学』。治安維持法と戦争との長い年月の間はじめの二冊の文芸評論集は発禁になっていた。著者が十二年間の獄中生活から・・・ 宮本百合子 「巖の花」
・・・というエセーニンの詩がよまれた時に衆議一決している。だが、果して詩人エセーニンは、このコンムーナの一同が武器を揃えて、パンフョーロフが正しく描写しなかったとして攻撃している農村の集団化について、社会主義的な見方を持っていただろうか? エ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫