・・・天国への招待。十四章十五節―二十四節。天国実現の状況。十七章二十節―三十七節。財貨委託の比喩。十九章十一節―二十七節。復活者の状態。二十章三十四節―三十八節。エルサレムと世界の最後。終末に関する大説教である、二十一章七節・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・そして、長い間自分たちをだましていた正体を見破ってしまいました。「こんな、まがった竹がなんになるんだ。」といって、すずめたちは弓にとまりました。 旅をして帰った、じいさんの息子が、「いまごろ、弓なんか持ったかがしなんてあるもので・・・ 小川未明 「からすとかがし」
・・・ そして、開店の日はぜひ招待したいから、住所を知らせてくれと言うのである。住所を控えると、「――ぜひ来とくれやっしゃ。あんさんは第一番に来て貰わんことには……」 雑誌のことには触れなかったが、雑誌で激励された礼をしたいという意味・・・ 織田作之助 「神経」
・・・その家にもう一人小隊長と呼ばれている家族がいる。当年七歳の少年である。小隊長というのは彼等三人の中隊長であった人の遺児であるからそう名づけたのであろう。父中隊長の戦死後その少年が天涯孤独になったのを三人が引き取って共同で育てているのだ。・・・ 織田作之助 「電報」
・・・ 一つには、娘の正体がまったく解らないということも、小沢を自重させていた。それに、娘の方から寝台へ誘ったといっても、万一それが無邪気な気持からであったとすれば小沢の思い違いはきっと悔恨を伴うだろう。「君、こうしていて怖くない……?」・・・ 織田作之助 「夜光虫」
・・・……「で、ゆうべあんなことで、ついフラフラとあの松の枝にぶらさがったはいいとして、今朝になってほんとに俺の正体は人間でなくて狐だったなんということだったら、多少痛快だったな……」と、寝床の中で電報を繰返して読みながら、そうした場合の・・・ 葛西善蔵 「父の出郷」
・・・の出口入り口なれば村の者にも町の者にも、旅の者にも一休息腰を下ろすに下ろしよく、ちょっと一ぷくが一杯となり、章魚の足を肴に一本倒せばそのまま横になりたく、置座の半分遠慮しながら窮屈そうに寝ころんで前後正体なき、ありうちの事ぞかし。 永年・・・ 国木田独歩 「置土産」
・・・ それ等が、殆んど紙の正体が失われるくらいにすり切れていた。――まだある。別に、紙に包んだ奴が。彼はそれを開けてみた。そこには紙幣が入っていた。五円札と、五十銭札と、一円札とが合せて十円ぐらい入っている。母が、薪出しをしてためた金を内所で入・・・ 黒島伝治 「渦巻ける烏の群」
・・・ 最初、日本の兵士を客間に招待して紅茶の御馳走をしていた百姓が、今は、銃を持って森かげから同じ兵士を狙撃していた。 彼等の村は犬どもによって掠奪され、破壊されたのだ。 ウォルコフもその一人だった。 ウォルコフの村は、犬どもに・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・が、パルチザンの正体と居所を突きとめることに苦しんでいる司令部員は、密偵の予想通り、この針小棒大な報告を喜んだ。彼等は、パルチザンには、手が三本ついているように、はっきりほかの人間と見分けがつくことを望んでいたのだ。 大隊長は、そのパル・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
出典:青空文庫