A ――佃 一郎 自分―― 伸子 父 ――佐々省三 母――多計代 岩本――中西ちゑ子 弟――和一郎 南 ――高崎直子 弟――保 和田――安川ただ/咲森田、岩本散歩 或日曜後藤避暑の話、ミス ・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(一)」
長篇「伸子」を書いたのは今から十年ばかり前のことで、完成までに三年位の時間がかかりました。『改造』へ一年に四度位の割で四五十枚から二百枚位まで時々載せてゆき、単行本にする時に全篇すっかり手を入れて大部ちぢめました。 当・・・ 宮本百合子 「「伸子」について」
一、伸子は 段々ひきつけられた、p.9「プロレタリアートは時代の先端を壮烈な情熱をもって進んでいる、しかも我々の前には過渡期の影が尚巨体をよこたえている」 一章一章が、青年らしい丹念さでまとめられている。・・・ 宮本百合子 「「敗北の文学」について」
・・・「歌声よ、おこれ」などの民主主義文学についての文学評論のほか、「播州平野」「風知草」などにこの作家にとって独特であった解放のよろこびと戦争への抗議を描き出した。「伸子」の続篇として、一九二七年以後の二十年間の社会思想史の素描ともなる「二つの・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・「赤と黒」もよみ、レマルクの「凱旋門」もよみ、「風とともに去りぬ」もよんでいるとする。同時に「たけくらべ」「にごりえ」をよんだことがあるし、「あぶら照り」「妻の座」も読んでいるとする。「伸子」を読んでいるかもしれない。そしてこれらのすべての・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・ 丸っこい体の伸子さえ小さい女になって外套のなかからあらわれた。そして、ザールをぐるぐる歩きまわる。○急にみかんの匂いがする 平土間の席、○レーニングラードのN 濃いまつ毛が美しいかげりを与えるというより病犬のような・・・ 宮本百合子 「無題(十三)」
・・・そのほか二人の間にはなんの詞も交わされなかった。親子は心の底まで知り抜いているので、何も言うにはおよばぬのであった。 まもなく二張の提燈が門のうちにはいった。三男市太夫、四男五太夫の二人がほとんど同時に玄関に来て、雨具を脱いで座敷に通っ・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・見たと云う、ステレオチイプな笑顔の女芸人が種々の楽器を奏する国際的団体の事や、マルセイユで始て西洋の町を散歩して、嘘と云うものを衝かぬ店で、掛値と云うもののない品物を買って、それを持って帰ろうとして、紳士がそんな物をぶら下げてお歩きにならな・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・が、二人の塊りは無言のまま微かな唸りを吐きつつ突き立って、鈍い振子のように暫く左右に揺れていた。「此の餓鬼めッ。」「くそったれッ。」 勘次の身体は秋三を抱きながら、どっと後の棺を倒して蒲団の上へ顛覆した。安次の半身は棺から俯伏に・・・ 横光利一 「南北」
・・・でお霜が出掛けてゆくことには、余り親子争いをしたくなかった彼は、外見、自分も母親同様の考えだと云うことを、ただ彼女だけに知らせるために黙っていた。が、安次を連れて行くことには反対した。けれども、自分のその気持を秋三に知らさない限り、自分の骨・・・ 横光利一 「南北」
出典:青空文庫