・・・ドストイエフスキーなどがよみ直されるのみならず、人間の神性とか獣性とかいう問題にからんで云々され、不安の問題が上程され、その深めるための文学的努力はされずに舟橋聖一氏は文学における行動性ということを主張しているし、なかなか壮観です。その行動・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・作家の精神と肉体とは現実に向って先ず活々と積極性をもって動き出さなければ文学に新生命はもたらされまいと云う要求が起った。当時のフランスの文芸思潮の積極的な動きがN・F・R誌などを通じて日本へもその影響をもたらしたこともある。「行動主義の文学・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ての究明と呼応して取りあげられたのであるが、私たちの注意をひく点は、ブルジョア文学におけるこれらの諸課題=リアリズムの問題も、外国の古典作品の研究、明治文学の再吟味などすべてが、文学創作にとって実際上新生面を打開する積極的な役割ははたし得ず・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・「これは、裁判は証拠中心主義のものであって、公判において証人尋問を申請し、尋問することは重要なことである。この際A証人がのべた内容と、検事側の主張するB証人の陳述内容とが異るとき、この何れかは偽証罪となる。検事側の主張するB証人の内容が正し・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・夜も昼もと、おさえがたい成長をうながされつつ、――新制高校の若いひとびとの書いた原稿を一つ一つとよみながら、わたしは信頼とよろこびにみたされて、この事実を感じた。 原稿のなかには、丁度わたしが初めて日記というものをつけはじめたころの年齢・・・ 宮本百合子 「小さい婦人たちの発言について」
・・・明かに矛盾を認める心、真正なことの裏切られる苦痛、適当な言葉を知らず、整った順序に並べることの出来るほど、複雑な頭脳を持っていなかった彼女は、何も彼にもただ感じるだけなのである。 ああ、そんなことをするものではない、彼女は黙っていられな・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・p.277◎彼は宗教の問題を一種の神性の狂信を与えている国家の問題に移す。そして、彼の生涯の最も真摯な告白の中で「君は宗教を信じているか」という問に対し 極めて実直な奴隷のように「僕はロシアを信じている」と答えるのである。 なぜなら・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・「破戒」によって、立派な出発をした。「春」「家」「桜の実の熟する時」「新生」「嵐」、それらの間に「新片町より」「後の新片町より」「春を待ちつゝ」等の感想集をもち、十二巻の全集が既に上梓された。更に最近七年間の労作である長篇「夜明け前」は明治・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
・・・一月六日の時事新報二面のトップに「五・一五事件山岸中尉の新生」という見出しの写真入り記事があったのをごらんでしたろう。昭和七年五月十五日に永田町の首相官邸で当時の首相であった犬養毅を射殺した一団のテロリスト将校がありました。前年にいわゆる満・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・人間生活の暗い半面、神性に対する獣としての人間が描かれはじめたのであったが、自然主義も日本の特殊な社会的・文化的地盤へ落ちては、独特な花を開かざるを得なかった。その精神史においてまだ一度も人間らしい人間としての自覚、活動の歓喜を味ったことの・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
出典:青空文庫