・・・ インテリゲンツィアが階級をもたぬものであることや、可動的な本質から弱いものであるというような一応型にはまった、消極性の自認が近頃はやるけれども、本当に一人一人が、自分の毎日の生活の内部から現実に身をひたして感じつめて行けば、そこにイン・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・一言、悪かったと云ったら、私は、少くとも、今度の恋愛、結婚、すべてを悪かった、と自認したごとくなるだろう。未来の一生を、彼女の、狭い、純潔だが、偏した、善悪の判断の下に、終始しなければならなくなるだろう。 寒い日で、炬燵にさし向い、自分・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・現代の紫式部と自任し、うぬぼれ、自己陶酔して、こたつにあたったような暮しをしている。三 立候補しない。だから党的に成長しない。四 宮本百合子を評価することは他の党員作家に対して有害である。 以上の項目の若干についてある程度の訂正・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・これらの人々の考えかたの特徴は、作家の大衆に対する文化的指導性を自身の社会性についての省察ぬきに自認している点、及び、所謂俚耳に入り易き表現ということを、便宜的に大衆的という云い方でとりあげていて、従来の通俗文学との間に、画すべき一線のあり・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
・・・と思われて、今さら子供の生れて来た秘密の奥も覗かれた気楽さに立ち戻り、又ごろりと手枕のまま横になった。」これが、高邁というポーズを流行せしめた一人の日本の作家の「一人前に成長した」と自認するところの姿であることを、読者は納得し得るであろうか・・・ 宮本百合子 「「迷いの末は」」
・・・も亦、伝説が、日本の神人を語るより以前からの「日本人」の一断面ではないだろうか。私は今、紐育の町中に居る。私の足の下には靴の皮がある。キルクの床がある。石とコンクリートの下には、アメリカの土がある。けれども、けれども、私には、小さい島国の、・・・ 宮本百合子 「無題」
・・・ 自分をよい母と自任している允子が、どんなによい母だって、息子に出てゆかれてしまうのだ、という結論から、再び医者として自立する心理の過程に、私は一応の積極的な意味を認めると同時に、現代の中流家庭内におこりつつある何か深刻な親子の利害の対・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・早稲田大学講師辞任。「同志の人々」「海彦山彦」等。 一九二四年。震災で演劇雑誌が全滅したので、劇作家協会が主体となり、新潮社から『演劇新潮』を発行。推されて一年間その編輯主任となる。「熊谷蓮生坊」「大磯がよい」「女中の病気」「スサノヲの・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫