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・・・幸福や幸運というものがいかにもぼんやり遠くにあって、今日の現実とは反対のものとして心に描かれているような社会の条件のなかでこそ、幸運の手紙はその循環を全うし得るのではなかろうか。 地球を七巻き巻くとかいう云いかたも執念めいた響きを添える・・・
宮本百合子
「幸運の手紙のよりどころ」
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・・・そして、これは決して、文学の専門的な何かを前提とするものではなくて、作家と作品の間にある血液循環、細胞関係の必然の結果であり、人間的な総括的な直感である。この事実は日頃あらゆる人々の経験しているところであると思う。 かの子さんの小説は、・・・
宮本百合子
「作品の血脈」