-
・・・ このことは歴史画のみならず、一般に複雑な情緒や事件を現わす画についても言える。ある特殊な情緒に動いている人間の顔などは、モデルに頼ることができぬ。実生活のあるきわどい瞬間に画家の眼に烙きついた印象を生かすほかはないのである。そうしてそ・・・
和辻哲郎
「院展遠望」
-
・・・しかし氏の描くところは、農村の風物によって起こされた氏自身の情緒であって、農村の風光そのものの美しさではない。もとより画家が自らの心を通して描く以上は、いかなる対象の美しさも画家自身の内にある美であって、「対象そのものの美しさ」とは言えない・・・
和辻哲郎
「院展日本画所感」