・・・ 昨今のように、一般の社会状勢が息苦しく切迫し、階級対立が最も陰性な形で激化しているような時期に、鬱屈させられている日常生活のせめてもの明るい窓として、溌剌として、新しい恋愛がどことなし人々の心に翹望されていることは感じられる。しかも、・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・において作者が念頭に置かない一般の情勢であったこと、それらが私たちの心をまじめな感想にひきこむのである。 種々のゆがみをもちつつ、献身的な努力でともかく今日まで押しすすめられて来た運動の段階にあって、私たちは大きい成果の上に生きていると・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・さき頃の映画の東宝問題というものがでると、誰にもファシズムの反動文化政策というものが分るし、まして、この頃のような社会情勢に対してファシズムの圧力を感じ、それに対して反対の声をあげない人はありません。三鷹事件、下山事件の新聞記事の扱いかたな・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・一九四五年の八月が来て、二年三年とたって、こんにちの情勢の下で自分が二十年前にかいたソヴェト紹介をよみかえして見ると、嘗ての暗黒の時に感じた神経的な反撥は一つも感じられない。その時代の理解の素直さが、自然にうけとれる。明るさがうそでないこと・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・その情勢が、ドイツ・フランス等の大衆を団結させ、左翼の組織は拡大した。孫文派が広東政府を樹立し、中国国民党宣言を発表した。京漢鉄道総工会の成立大会を武力解散させた軍閥呉佩孚に対して中国労働者がジェネストを起し、英国の労働運動に一つのエポック・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・日本の人民が明治二十七八年の戦争以来、敗けない日本軍の幻想と偏見にだまされつづけて、国内のファシズムに抗争する正当な世界情勢についての判断をうばわれ、そのための真実な気力も失わされていたように。 わたしたちは、こんにちこそ、国際的な先入・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・けれども、何年、何の時代に、どういう情勢のもとに起ったことだという意味での具体性のないのが、アレゴリーの中の行為の特性である。 ところで、ごく簡単にしらべて、こういう特徴を見つけたアレゴリーがプロレタリアの文学として、実際どのくらい役に・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・年代の若い人々にとって、特に意味をもっているわけは、この長篇小説の作者が、主人公ジャックの成長して行った当時のフランスの中流社会の生活ぶり、その気分を客観的にとらえていると同時に第一次大戦前後の社会的状勢も客観的な歴史の眼で描きだそうとして・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・そして、ジェネヴァで、第一次ヨーロッパ大戦のはじまる前後のきわめて切迫した国際情勢にふれる。 やがて、第一次ヨーロッパ大戦にまきこまれたジャックが、どういう風に国際的な資本主義経済の自己撞着と戦争の矛盾を発見し、彼のヒューマニティーに立・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・ 村の社での演説の失敗は、これら数多の必要な情勢分析の不確実さから生じた当然の帰結であった。彼が戦闘的唯物論者らしく部落内の現象の分析綜合をなし得たら、「彼女の古い精神がいかに社会変革をきらっていようとも彼女のからだ――生活はこれを熾烈・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
出典:青空文庫