・・・ 仙二は朝早く起きるとすぐ池にとんで行った、そうして着物をぬぐとすぐまっさおな水面に水鳥の様に泳ぎ出した。かなり広い池をのこりなく泳ぎまわって盛の藻の花をつきるまで取った。 茶色のくきの細くて長いのを首にかけて上った時、仙二は涙をこ・・・ 宮本百合子 「グースベリーの熟れる頃」
・・・利根川の青き水の面に白き帆の 水鳥の如舞ひつゝも行く荒れし地を耕す鍬の手を止めて 汽車の煙りを見守れる男田舎道乗合馬車の砂煙り たちつゝ行けば黄の霞み立つ赤土に切りたほされし杉の木・・・ 宮本百合子 「旅へ出て」
・・・三番池には、非常に沢山の水鳥が群れて居る。五、六羽白い色のも見える。何だか分らない。大抵は鴨位の者であろうが、白いのだけは流石にもっと好いものらしく見える。 昼近くなってから甚五郎爺が一羽まだバタバタして居る鴨をさげて来た。田の中に昨夜・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫