・・・ふっと気のついた朝には、すっからかん。きれい、さっぱり。可笑しいようですよ。父は、みんなに面目ないのですね。そうなっても、まだ見栄張っていて、なあに、おれには、内緒でかくしている山がある。金の出る山ひとつ持っている、とまるで、子供みたいな、・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・いずれが真珠、いずれが豚、つくづく主客てんとうして、今は、やけくそ、お嫁入り当時の髪飾り、かの白痴にちかき情人の写真しのばせ在りしロケットさえも、バンドの金具のはて迄。すっからかん。与えるに、ものなき時は、安(とだけ書いて、ふと他のこと考え・・・ 太宰治 「創生記」
・・・ふっと気のついた朝には、すっからかん。きれい、さっぱり、可笑しいようですよ。父は、みんなに面目ないのですね。そうなっても、まだ見栄張っていて、なあに、おれには、内緒でかくしている山がある。金の出る山ひとつ持っている、とまるで、子供みたいな、・・・ 太宰治 「火の鳥」
出典:青空文庫