・・・親にまかせ、夫にまかせていてよかったはずの女の人生は、今日、ずっしりと女一人の肩にのしかかっています。考えて、理屈をいっている時代でないと、食うためにだけ計画性をもつとすれば、面白いことに、食うための計画性そのものが、社会的な計画性と一致し・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・暗い帝国主義の歴史が生活の重量となってずっしりと彼女をとりまき、のしかかっているまんなかにいて前方を見ながらテーブルの上に腕をくんでいるケーテの白髪の顔の上には、底知れないねばりと、失われることのない落ついたほこりがただよっている。・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・ところが不覚にも、その棧橋の陸につないであるところに私と栄さんと合計三十何貫の重みがずっしりとかかっていることに心付かず、私が「十二貫じゃ無理よ、こっちはこの通りなんだからね、」と云ったのでナアーンダとあきらめ、いねちゃん、大笑い、帰りに盲・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・今年の夏、駿河台にある雑誌記念館へ行ったときも、その建物の中の使われていない事務室の床の上に、こういう木箱がずっしりとつみ上げられていた。日本から海を越えてアメリカへ送られる書籍だということであった。上野図書館の廊下につみあげられている木箱・・・ 宮本百合子 「図書館」
・・・ 若い婦人にとって何よりの敵である境遇の重荷は、フロレンスの若い頸筋にもずっしりとのしかかっているのであった。第一は、彼女が生れた時代のイギリスの習慣の保守的な重み、第二は彼女が特に上流の淑女であるという重み、その二つの石は、やっとフロ・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
出典:青空文庫