・・・それだのに、何故討論は現在のわれわれが獲得した事実として存在する民主主義文学運動の所産を、全面的に先進的階級のために生かして使う機敏で闘争的なプランについての発言がなかったのでしょう。この面は、プロレタリア文学の遺産の継承に関する討論と等し・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ 彼女は専心に働いたのです。 けれ共今朝になって見ると彼女は何だか変な気持になりました。 踵の痛いのは立ち続けた故だと分りました。 頭のさっぱりしないのは余り明くない病室の燈で多くの注意を病児に向けながらも尚一生懸命に上杉博・・・ 宮本百合子 「二月七日」
・・・ それ等の涙の種を忘れ得る専心の仕事を得られないものであろうか。 斯う思うにつけ、知人の一人でまだ若い人が自分の病苦を未知な子孫に与えるのに忍びないと云って、孤独の一生を送る決心をして居るのを尊まずには居られない。 真に幸福な事・・・ 宮本百合子 「ひととき」
・・・たとえ、淑女らしさという金縛りを身にうけてはいても、その時代の先進国であったイギリス生れの知識婦人であったフロレンス・ナイチンゲールが、社会衛生、道徳改善の事業にその規模の大きい現実的な精力の対象を見出したということは、決して不思議ではなか・・・ 宮本百合子 「フロレンス・ナイチンゲールの生涯」
・・・ゴーリキイは極めて健康な本能によって人間としての女が発展進歩すること、社会的な土台の拡大につれて女の世界観も高まり得ること、そのために援助する義務が先進的な男女にあることをその芸術の中で示した。その一つは「母」である。ゴーリキイの最近の写真・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・は知られているとおりナロードニキの活動の高揚期を捕え、インテリゲンツィアの側から、若き先進者たちの内的矛盾を描きつつ農村を観察して行った作品である。農民はここでは一様に、灰色なものとして現れている。無知、狡智の錯綜が、一般性においてとりあげ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・そう焦慮して、作者は「思い切って職を抛擲し、専心文学に精進しようと思い立った。」 だが、二三ヵ月で、その生活は経済的にゆきづまって以来、作者は、S女史という婦人作家の助手をやり、聾唖学校の教師になり、紡績工場の世話係、封筒かき、孤児院の・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
・・・社会主義的生産にすすんでゆこうとする労働者階級の歴史的行動はそのような社会でこそ全人民生活がより人間らしいものになるから民主革命における労働者階級の先進性による社会各層の統一戦線もうまれる。 私たちの民主革命に関するいろいろの感情はその・・・ 宮本百合子 「三つの愛のしるし」
・・・そのころの日本における階級的自覚の段階から必然されて、プロレタリア文学運動では、理論活動が創作活動よりも先進した。自然発生にあらわれはじめた無産者文学一般の中に、プロレタリア文学とルンペン・プロレタリアート文学とのけじめをつけ、プロレタリア・・・ 宮本百合子 「両輪」
・・・従って、当時の世界で、日本は確かに支那に次ぐ文化の先進性を持っていたのであった。ところが、肝腎の近代の黎明であるルネッサンス前後に日本の支配層が小さく安全に自分の権力を確保しようとして、厳しい鎖国政策を執ったために、ヨーロッパがその後急速に・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫