・・・ 場面は病院のような処となり、学校の二階のようなところと成ったり、夢特有の唐突さで変るが、どうかして自分はひどくその気の狂った人に深い愛を覚えて居る。先方もそうであるらしい。ところが、二人で二階へ昇る廊下口のような処に居ると、其処へ、一・・・ 宮本百合子 「或日」
・・・それにもかかわらず、新しい社会に生れ変ったソヴェトの人々は、建設の熱意に溢れて、あらゆる面に自分たちの創造力を発揮した。戦法に於て驚くべきパルチザン闘争をした労働者、農民たちは、文化の面で全く新しい文学作品を送りだした。一人一人の人が当時の・・・ 宮本百合子 「新世界の富」
・・・この合理化を非合理化だと叫んでいるのは、英国人の商魂という特殊性を没却した第三インターナショナルの指令のままに誤った戦法を繰返しつつある小数運動者ばかりではないかと。 ――君と私とは心理状態が違う。だからたがいに歩み合って協調しようと云・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・けれども、その惨禍の中から、なお世界が驚いて日本の戦法を眺めたのは特攻隊に対してであった。僅か十六七の少年を英雄的な情熱に駆り立てて、いわゆる必殺の戦闘をさせた惨虐さは世界を驚かした。そういう非人間的な犠牲に堪えている日本の母の心持というも・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・小川は省内での饒舌家で、木村はいつもうるさく思っているが、そんな素振はしないように努めている。先方は持病の起ったように、調子附いて来た。「しかし、君、ルウズウェルトの方々で遣っている演説を読んでいるだろうね。あの先生が口で言っているように行・・・ 森鴎外 「あそび」
・・・それと相談したとて先方が神でもなければ陰陽師でもなく、つまり何もわからぬとは知ッていながらなおそれでもその人と膝を合わせてわが子の身の上を判断したくなる。それでまた例の身贔負,内心の内心の内心に「多分は無難であろうぞ」と思いながら変なもので・・・ 山田美妙 「武蔵野」
・・・彼らの武器は、彼らのとるべき戦法は、彼らの戦闘の造った文化のために益々巧妙になるであろう。益々複雑になるであろう。益々無数の火花を放って分裂するであろう。かかる世紀の波の上に、終にまた我々の文学も分裂した。 明日の我々の文学は、明らかに・・・ 横光利一 「黙示のページ」
出典:青空文庫