・・・ 高知は毎時観測の材料がなくて調べなかったが、広島や大阪では、前記の地方的季節風が比較的弱くて、その代りに海陸風がかなり著しく発達している、そうして夕方から夜へかけては前者が後者と相殺する、そのために夕凪がかなりはっきり現れる、そうして・・・ 寺田寅彦 「夕凪と夕風」
・・・なもの、無邪気なもの、天真爛漫な人生前期と提出している点、作者は極めて非プロレタリア的である。バイブルが「手袋なしには持てぬ」代物である通り、ブルジョア世界観によって偽善的に、甘ったるく装われ、その実は血を啜る残虐の行われている「子供の無邪・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ あなたのおっしゃる前期的作品ですが。前期といえば「小祝の一家」も或意味で前期です。「乳房」は一つの過渡でした。「雑沓」に至るまでの。 全集目録は明日お送りいたします。「どてら」はおうけとりになったでしょう? 中野さんが大島へ行ったとは・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・であろうし そういう基礎的な人権は守られ、生命擁護もされているだろうそれにひきかえ日本では「憲法にいう 人権さえみとめられていない 「前期的 状態である」したがって、基本的人権の最も基本的なところ 生命の・・・ 宮本百合子 「東大での話の原稿」
・・・列の心理をいろんな面から考えてゆくと、やっぱり或る対比として心に浮んで来る。何をッという気勢は云わば互の気力の渡り合いで、気力のきついものが、時によっては理非をこえて勝をしめる。列の前期の世相の殺気めいたものだと思う。 列の感覚というも・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
・・・その事をまず小生は前記の手紙によって感じさせられたのである。 正直に言えば自分は、二十七日の事件を聞いたとき、自ら皇室を警衛しに行こうという心持ちは起こさなかった。皇室警衛のために東京には近衛師団がある。巡査や憲兵も沢山いる。警手もいる・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫