・・・きっと、ソ連側だからだろう、などと笑いあったが、魚にそれぞれ好みの色のあるのは疑えない。ボラなども、赤いものなら、風船でも、布でも、なんでもよい。これもエサはいらず、赤に寄って来たところを引っかけてあげるのである。ドンコ ド・・・ 火野葦平 「ゲテ魚好き」
・・・「われらソ連に生きて」そのほかのルポルタージュがあらわれた。それらは日本軍隊の伝統的な野蛮さとたたかって捕虜生活の民主化に努力した記録。ソ同盟の社会主義社会の運営方法や建設の現実を、捕虜という条件にいながらも公平に評価しようとした若い学徒兵・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・しかし、石原氏がナチの科学政策とソ連の科学政策とを質的に同一なものとして否定しておられるのは、何だか腑に落ちない。常識人の目に映るナチは、病的な民族主義の強調などによって、自身の文化、科学をも貧弱化せざるを得ない矛盾を露出している。石原氏が・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・の中で、ソヴェト同盟の権力の下では同人雑誌を出すことを許されないということを知った、「同人雑誌こそ新しい文学の唯一の温床であるのに、それを欠く革命後のソ連文学がシーモノフにせよ」「『虹』にせよ、全く大衆小説で第二のゴルキーが出ないのも、かか・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
私は一九二七年から三〇年までソ連におりました。いまから考えれば大変古いことで、ちょうど第一次五ヵ年計画が始まったばかりのところです。ですから、皆様の方が新しい今日のソヴェトについては十分御存じのことでしょう。何を見ました、・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・ ソ連の作家生活にも、あまり金のとれぬ作家と沢山金のとれる作家との差別はあるだろう、という話が出ている。それは当然あること、並に作家活動と社会への功績の理解との融合を除村氏は答えとして与えられている。私がソ連の作家生活の幾分を見聞したの・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・吉田政府のバッサリ方針で、これだけいちどきに失業者がでれば、たとえソ連から一家へ五人の引揚げ者があったところで、生活の安定は約束されない。苦しい生活のあえぎから、せめてあれがいたらと思う親の心、あのひとさえいて働いてくれたら、と切実に思う妻・・・ 宮本百合子 「肉親」
・・・新聞には地図入りでベルリンに迫るソ連軍と連合軍の進路が示された。北フランスでどんどんと追いはらわれてゆくナチス軍の敗退の足どりがしるされた。レニングラードの市民の英雄的な闘い、遂に陥落しなかったモスクワ。ひとつひとつの民主的人民の勝利の前進・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・――イギリスがソ連とたたかえば一週間で壊滅されるだろう。アメリカとたたかえば一ヵ月でイギリスはつぶれるだろう、と。―― 戦争というものは、第二次大戦を経たこんにちでは、世界においてますますその古くさい野蛮さと非条理とを明白にしている。そ・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
岩波新書のなかに、米川正夫氏の翻訳でヴォドピヤーノフというひとの書いた「北極飛行」という本がある。 これは純粋な文学書ではなくて、ソ連の北極探検飛行の記録である。著者も作家ではない操縦士である。彼の指導によって北極の歴・・・ 宮本百合子 「文学のひろがり」
出典:青空文庫