・・・一九四〇年以後の日本のすべての炭坑には婦人が入坑し、過重な労役に服してきました。若い勤労婦人は最も危険・有害なあらゆる生産部門においてさえ活動しました。 しかも、日本の軍事的権力によって特別な保護をうけていた企業家たちは、生産の大半を婦・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・作品の市場としての今日の新聞雑誌、単行本出版のことは、その中へ文壇を出た作家というものを吸収するどのような能力を持っているのであろう。文壇を出るという言葉は成行として、出てから何処へか行くという感じを私たちに抱かせるのであるが、政府は作家の・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・が、引続いて起った長篇小説への要求、単行本発表への欲求の背景となった経済的な理由、発表場面狭隘の苦痛等と照らし合わせて観察すると、先ず横光氏によって叫ばれた純文学であって通俗小説であるという小説への転身宣言の暗黙のモメントとして、その市場を・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・、橋本英吉氏「炭坑」、中條百合子「乳房」、立野信之氏の長篇「流れ」等が現れた。 当時の事情はこの一方諷刺文学、諷刺詩の欲求を生み、中野重治、壺井繁治、世田三郎、窪川鶴次郎その他諸氏によっていくつかの諷刺詩が発表された。『太鼓』は諷刺詩を・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 今度改めて単行本として完成された「囚われた大地」を読み、私は作者の努力をやぶさかならず買うと同時に、種々の感想にうたれた。 作者は、一通りこれを書き終った今日、最初の着実な計画、農民の生活を描くという重大な目的にふりかえって、どの・・・ 宮本百合子 「作家への課題」
「禰宜様宮田」が、いつか単行本になる時があったら、是非云い添えたいと思っていたことを書きます。 あれは、そんなに大して大きなものでもなかったのに、非常に沢山の欠点を持っています。其等の欠点に対しての自分は、真個に何処まで・・・ 宮本百合子 「沁々した愛情と感謝と」
・・・いろいろな気持など、その時分は到って漠然としていたのだが、それでもその旅行の計画の中には、バクー見学とドン・バス炭坑見学とだけは繰りいれられてあった。ドン・バスの方はその前年全ソヴェト同盟のみならず世界の注目をひいたドイツ技師を筆頭とする国・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・ 婦人は決して炭鉱なんか、地面の下の労働をしてはならない。 婦人に決して熔鉱炉の前で火ダルマのようになって働く火夫の仕事は出来ない! 働く婦人は、いつも自分達で気をつけて職業病に打ち勝つようにしなければならないのです。 空気・・・ 宮本百合子 「ソヴェト映画物語」
・・・色は白紅淡紅でさし渡しは五分位、白い花のまん中に一寸と茶色の紋があるのなんかはものずきな御嬢さんが見つけたらキッとつまないではおかないほど人なつっこい花である。「どうして生えたんだろう。誰がまいたとも分らないのに……」「一人手にたね・・・ 宮本百合子 「つぼみ」
世界の経済恐慌につれて、日本でも種々の生産が低下し、それにつれて燃料原料となる石炭は二割七分の生産減を見た。北九州地方の炭坑労働者の生活などはこの頃以前にましてひどい有様になって来ている。 これは北九州の或る坑山で実際・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
出典:青空文庫