・・・この秋、洋々たるヴォルガ河を下り、湯浅とコーカサス、バクー油田、ドン・バス炭坑見学をした。一九二九年正月から四月いっぱい、猛烈な胆嚢炎でモスクワ〔大学〕第一附属病院に入院した。五月から十一月末までベルリン、ウィー・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・女子大は一学期でやめていた。一九一七年「日は輝けり」「三郎爺」「地は饒なり」「一つの芽生」単行本『貧しき人々の群』が玄文社から出版された。一九一八年単行本『一つの芽生』が新進作家叢書の一部とし・・・ 宮本百合子 「年譜」
長篇「伸子」を書いたのは今から十年ばかり前のことで、完成までに三年位の時間がかかりました。『改造』へ一年に四度位の割で四五十枚から二百枚位まで時々載せてゆき、単行本にする時に全篇すっかり手を入れて大部ちぢめました。 当・・・ 宮本百合子 「「伸子」について」
・・・勤労所得税は五千円以上になると、賃銀から天引きされる率があんまりひどいから、鉱山に働く人々は、五千円以内に自分の賃銀をとどめて置こうとしているのだそうです。炭坑の封建的な重労働では、賃銀を五千円以上にとるだけ石炭を採掘することは、相当のがん・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
・・・ キエフ市はソヴェト第一の大炭坑区ドンバス地方に近い。しつこく「白」が最後に潰滅する迄つきまとった。 フォルシュはそのはげしい革命の波にうたれながら、「ラビ」「居住者」など、彼女の代表作となったものを書いた。 シャギニャーンの『文学・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・だから、よしんば個々の作品が、直接には亀戸の小さい紡績工場で闘争する女工だけを描いているとする、または九州の炭坑罷業を描いているとしても、その主題がはっきり資本主義第三期の世界経済恐慌との内国的関係において、プロレタリア・農民の政治的攻勢の・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・石川もこれには寒肥えその他怠らず手入れするので毎年季節が来ると、二株の牡丹はそれぞれに見事な淡紅の花を咲かせた。 五月初旬の雨上りの日、石川は久しぶりで病人の様子を見に行った。「旦那は?」「御散歩でしょう」 龍の髯を植えた小・・・ 宮本百合子 「牡丹」
・・・「英国人の着実な商魂が実際においてどれだけの働きをしているかと云うことは、炭坑夫安寧協会の仕事を見ても分る。炭坑主が一頓について一ペンスだけ出して独立な大きいビジネスをやってるんだ。」 しかし、その同じ着実な商魂が考え出した英国炭坑・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・花びらの底の方が紅色にぼかされていて、尖端の方がかえって白いのであるが、花全体として淡紅色の加わっている度合が大きい。その相違はわずかであるとも言えるが、しかし花の数が多いのであるから、ひどく花やかになったような気持ちがする。 何分かか・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
・・・一九〇九年までには単行本が六冊、その後一九一三年までには単行本が十冊、雑誌の論文が十篇に達している。戦争が始まってから後にも『キルケゴオルとニイチェ』という本が出たそうである。 キェルケゴオルはその誠実な人格的生活、真生活築造の情熱、及・・・ 和辻哲郎 「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」
出典:青空文庫