・・・ 千世子の家とはかなり親しいんで千世子なんかもちょくちょく行った。 大伯母さんと千世子なんかは呼んで居た。三十八九の時、信二をもったので息子の年の割に母親は老けて居て鬢はもう随分白く額なんかに「涙じわ」が寄って居る。 まとまった・・・ 宮本百合子 「千世子(二)」
・・・ 私は漸う世界が明るくなって来るまでは、若し泥棒がだんびらを下げてヌッと立ちはだかったら、どんな風に落付いてやろうか。 ちょくちょく新聞に出るよその偉いお嬢さんや奥さんの様に、お茶を出しお菓子を出したあげく、御説法をして、お金をちょ・・・ 宮本百合子 「盗難」
・・・ 奥さんがずぼらななりをして居るのに、いつもその子は、きちっとした風をして居た。 ちょくちょく下の妹もつれて来た。 ちょんびりな髪をお下げに結んで、重みでぬけて行きそうなリボンなどをかけて、大きな袂の小ざっぱりとしたのを着せられ・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
・・・うちにもちょくちょく遊びに来る、色白な、下膨れの一寸愛らしい娘であった。先頃、学校を出たまま何処に居るか、行方が不明になったと云って、夜中大騒ぎをしたことがある。それも、病気を苦にして、休みたかったのだったそうだが、今度は、愈々腹膜になって・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・私もちょくちょく来たいとは思っても何しろ遠いもんですからね」 茶など勧めたが、飯田の奥さんの顔色がただでなく石川に見えた。「――いよいよ十八日立前になりますが――いい天気にしたいもんです。……奥さんもどうかおいで下さい、やっぱりああ・・・ 宮本百合子 「牡丹」
・・・私はそこの用事を通して知り合った人であったのだけれど、この数年間割合にちょくちょく会って、何となし仕事とはべつに生活の一寸した話などもし合う間柄であった。私の心を一層傷ましめるのは、その黒枠の通知に父某とまだ若かったその人の訃を告げているの・・・ 宮本百合子 「若い母親」
出典:青空文庫